人の気配「まだまだ話をしたい理由」
ライブツアーをする中で出会った素敵な人を紹介するこの連載。まずは妄想で全国を旅してもらい、いつの日か実際にその街を歩いてもらえたらと願いながら、2022年も書き連ねていこうと思う。
今回は岐阜に住む「人の気配」たっぷりな人の話。フラワーアレンジメントを生業(なりわい)にしている上広望さんと出会ったのは6年前。久々に岐阜でライブをしたときのことだった。最初から名前ではなく「のんちゃん」という愛称で紹介されたが、正直いきなり「ちゃん」を付けて呼べるような雰囲気はなく、そもそも僕もそんなタイプではない。しかし、小一時間後には自然と「のんちゃん」と呼べている自分に驚く。人は見た目ではない。見えない壁もなく、身も心も洒落(しゃれ)ていて、強い信念を持った人だとわかった。言うまでもなく、そういう人は優しい。
のんちゃんの周りにはさまざまな仕事をしている人がいる。会うたびに刺激的な出会いをもらい、今現在も新しいグッズの制作を一緒に進めている人がいる。プライベートでは、岐阜を訪れたときに欲しい車の話を軽くしただけで、その日のうちに今の車が見つかった。決して打算的ではなく、ただ気が合う人とは長く付き合っていく。そこにチャラさはなく、人生や命の話もできてしまう。人と人がつながっていく様を面白がりながら、人は孤独であるとわかっているようにも見える。まだまだ話をしたいと思う人なのだ。
僕の勝手な推測が多くなったが、少なくとも僕にはそう見えているということで許してほしい。おわびの気持ちとともに『偶然を待っているだなんて』が頭の中で流れた。われながら良い選曲だ。また会える日を楽しみにしている。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。V6への楽曲提供が話題。3月26日、渋谷クアトロでワンマン公演を開催する。