「自分の都合で働ける」 十勝発、1日農業アプリが好調 管内13JA
十勝出身のエンジニアが開発した、農業アルバイトを1日ごとに募集するスマートフォン向けアプリ「デイワーク」が好調だ。十勝では全24JAのうち13JAが活用し、管外にも広がりを見せている。農繁期の人手不足に悩んでいた農家から「すぐに確保できる」と好評を得ている。(高田晃太郎)
アプリは会員登録した人がやりたい仕事を選び、農家が受け入れる仕組み。アルバイト側は自宅から農場までの距離や日給、作業内容などが一目で分かり、農家側は名前や年齢、直前に仕事をキャンセルした回数などが確認できる。
陸別町出身のシステムエンジニア原雄二さん(神奈川県在住)が開発した。昨年から本格運用し、帯広市と近郊の五つのJAで延べ4000人以上がマッチングして働いた。今年も募集が始まり、ナガイモ掘り(4月)やスイートコーン収穫(8月)、キャベツ収穫(10月)など延べ800人以上の枠が既に埋まっている。
帯広市内の八代ファーム(基松町)の八代勝義代表(38)の畑では今月中旬から5日間、ナガイモ掘りで毎日2人ずつ募集した。以前はパートや帯広畜産大学の学生に頼っていたが、高齢化や卒業で縁が切れるなどで、人手の確保で苦労していた。
アプリでは、どんな人が働きに来るのか当日まで分からず不安な面もある。だが、2人の募集に対し、7人から応募があるほど反応は上々だ。八代代表は「1日だけでも大きな戦力。来てくれるだけでありがたい」と感謝する。
14日に初めて利用した市内の主婦(40)は「お小遣いを稼ぐために参加した。自分の都合に合わせて働けるのがいい」と話す。
こうした評判は口コミなどで広まり、今年は十勝清水町や本別町、豊頃町など管内8JAのほか、石狩市や名寄市、伊達市など管外の11JAも新たに活用し始めた。農林水産省の協力で、秋田県や福島県、長野県、静岡県も導入に向けて前向きという。
原さんはアプリの意義について「会社員など、長期では働けない人たちが農業現場に来られるようになった」と強調する。アルバイト登録者は管外も含めて約1630人で、半分以上は会社員だ。
今年度から一般社団法人農林水産業みらい基金から助成を受けることが決まり、今後数年間は農家側もアルバイト側も無料で利用できる予定。原さんは「誰でも農業に参加できる世界をつくり、地域の所得向上に役立ちたい」と話す。
公務員も「副業」じわり
人手不足を背景に地方公務員の副業が広がっている。道内では渡島管内鹿部町が昨年11月、基幹産業である漁業を想定して副業制度をつくった。十勝でも、芽室町が前向きだ。
地方公務員の副業は法律で原則禁じられている。ただ、自治体の許可があれば可能で、総務省によると、2018年度の許可件数は全国で4万1669件。神戸市や奈良県生駒市などは許可基準を公表し、地域に貢献できる副業を積極的に促進している。
鹿部町の副業制度は、人手不足が進むホタテ、コンブ漁などを想定。町外出身者も多いことから、担当者は「現場を体験することで地域の課題を知り、解決できる人材になってほしい」と狙いを語る。
4月までに制度を利用した職員は2人にとどまるが、道内外から問い合わせが相次いでおり、「今後増えていくだろう」とみる。
芽室町も農業面での副業に前向きで、手島旭町長は「時間やエネルギーがある若い職員が、農業の手伝いなどをして町の活性化につながればいい」と期待する。(高田晃太郎、細谷敦生)