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噴射機の開発で連携 ISTとJAXAが共同研究

高空燃焼試験設備の前で打ち合わせを行う(左から)金井さんと冨田さん

 【宮城県角田市】大樹町のインターステラテクノロジズ(IST、稲川貴大社長)は、軌道投入用ロケット「ZERO(ゼロ)」の開発に向けて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を進めている。2月下旬にはJAXA角田宇宙センター(宮城県角田市)で、ISTが設計したエンジン噴射器の性能評価試験を実施した。ISTの金井竜一朗さんは「必要なステップを着実にこなしている。単独では乗り越えるハードルは高いが、JAXAの経験を生かして共同研究を活発化させたい」と話している。(池谷智仁)

 ゼロは超小型人工衛星を地球周回軌道に投入するロケットで、2023年の打ち上げを予定している。同社の観測ロケット「MOMO(モモ)」に比べて機体重量は約30倍、エンジン出力は約50倍と、開発の難易度は高まる。

 そこで、民間事業者らと共同で宇宙関連事業を創出するJAXAの「宇宙イノベーションパートナーシップ」を活用。ゼロのメインエンジンを題材に、低コストロケットエンジンの研究開発に取り組んでいる。19年3月から始まり、ISTは断続的に技術者を派遣して知見を深めている。

噴射器の性能評価試験の様子(IST提供)

 今年1月下旬から2月下旬には角田宇宙センターで、ピントル型噴射器の燃焼特性を調べる性能評価試験を行った。噴射器は燃焼室に燃料を送り込む機関で、ピントル型は部品点数が少なく、コスト削減が期待できる。燃料はLNG系のガス状メタンを使用した。

 噴射器の性能評価試験は、燃焼効率や燃焼安定性、壁面熱負荷特性などのデータを取得するのが目的。燃焼室のどの位置にどれだけの熱負荷が掛かるかという壁面熱負荷特性は、再生冷却エンジンの研究開発に重要だが、試験には特殊な構造の燃焼室が必要でJAXAの設備を活用した。

 用意した噴射器は8種類。ISTとJAXAが4種類ずつ設計した。2月21日には高空燃焼試験設備で、IST設計の噴射器を使った初の性能評価試験を実施。推力は3トン級で、噴射器からガス状メタンと液体酸素を燃焼室に送り込み、7秒間燃焼させた。噴射後は燃焼室の状態などを確認した。

 共同研究を担当するISTの金井さんは「試験データは想定通りのものや想定外のものもあり、非常に興味深い。さらに開発を本格化させたい」と話した。

 JAXAの冨田健夫主幹研究開発員は「低コストで軽量なロケットエンジンは必要。JAXAとしてもデータがほしい」と共同研究の意義を強調。「ISTはスピード感があり、一定のリスクも許容している。文化がだいぶ違う」と刺激を受けていた。

 噴射器の共同研究は今後も続け、エンジンに燃料を注入するターボポンプ関連の研究も行う予定。

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