輸血用血液が供給不足に 道赤十字センターが想定
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、輸血用血液が全道的に供給不足に陥るリスクが高まっている。道赤十字血液センター(札幌)がまとめた在庫シミュレーションによると、4日時点で100%(3日分)あった赤血球製剤が10日にも50%(1日分)まで激減する可能性がある。同センター・帯広出張所の桑原昭所長は「このままいけば、十勝でも医療機関で手術ができなくなる。一人でも多くの人に協力してほしい」と呼び掛けている。
道が2月28日に緊急事態宣言を出し、外出自粛を要請して以降、道内では企業・団体が移動献血車の出張をキャンセルしたり、献血ルームを訪れる人が急減したりする状況が続いている。
適正在庫(100%前後)を維持するには1週間当たり約3000人の協力が必要になるが、2月23~29日は計画に対し2割減で、3月1~7日は3割強の減少が見込まれている。
これに対し、道赤十字センターは4日に赤血球製剤の在庫シミュレーションを策定。「献血者がこのまま激減すれば、7日にも在庫量が危険域(70%以下)まで減少し、10日には50%も割り込む」という見通しを示し、企業・団体などに献血への協力を求めている。
輸血用血液は通常、ある地域で在庫が不足しても全国各地で融通し合うセーフティーネットを構築している。例えば、胆振東部地震のように全道的な影響が出る災害で道内の在庫が不足した場合には、本州から在庫が送られる。
ただ、今回は新型コロナウイルスの感染拡大で全国的に献血が減少する中で、全道の供給が悪化するという異例の事態。「40年間、献血に関連した仕事をしているが、こんなことは初めて」と桑原所長。「万一、在庫が1日分という状況で大規模災害などが発生すれば、助けられる命も助けられなくなってしまう」と危機感を募らせる。
5日には、白血病と闘う競泳選手の池江璃花子さんが自身のツイッターで「献血に協力を」と呼び掛け。全国的に献血が激減する窮状に注目が集まったことで事態が好転する兆しもあるが、予断は許されない。
感染対策も徹底
管内で稼働する移動献血車や帯広すずらん献血ルーム(日曜のみ受け付け)では、消毒などの感染対策を徹底。献血をする人にも体温を測ってもらい、37度5分以上の熱がある人には献血を遠慮してもらう措置を講じている。
桑原所長は「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために道が外出自粛などを求める中では矛盾するかもしれないが、献血に来てもらえるように感染リスクを最小限に抑えている。道内の医療機能を守るためにも、どうか献血に協力してほしい」と話している。(奥野秀康)