鹿追 来年の日勝没後50年展へ大作修復
【鹿追】鹿追ゆかりの画家神田日勝(1937~70年)の大作「人間A」と「人間B」の調査・修復が、町内の神田日勝記念美術館で行われている。来年、日勝の没後50年を記念して東京などで開く巡回展に向けた作業。美術修復の第一人者として知られる森直義さん(63)=神奈川県=を中心に、作品に込めた日勝の思いと向き合いながら進めている。
同館が所蔵する両作品は日勝の作品の中では最大級の150号で、ベニヤ板に油彩で描かれている。「人間B」は69年の独立展入選作。一部が木枠を超えるほどの厚塗りが特徴で、そのため絵の具がはく離している箇所も多い。サイズや状態から、巡回展に伴う長距離移動や長期間の展示には耐えられないとみて、修復することにした。
森さんは国内外の著名な画家の修復に携わり、近年ではモネの大作「睡蓮 柳の反映」を手掛けたことでも知られる。10~13日に森さんと2人の女性修復士が同館で作業に当たった。
修復に合わせ、日勝の“幻の絵”の存在も調べた。「集う」という名の油絵で、日勝に近い人がかねてから「『人間B』の下に描かれている」と主張していた。赤外線による調査の結果、両作品とも下に他の絵は描かれていなかった。
いずれの作品も、150号サイズになるよう、ベニヤ板2枚と半分を組み合わせてキャンバス化したことに森さんは着目。「初めから2枚とも展覧会への出品を目指し、意欲的に神聖な気持ちで描いたのではないか。他の絵に重ねるようなケースではなかったと思う」と推察する。
「美術作品の価値は物質的なことだけではない。作家がどのように作り、魅力がどこにあるのか把握した上で、それが読み取れるように修復することが重要」と森さん。両作品の修復でも、新たな額縁で強度を出すことはせず、裏面を補強するなどして、絵の具がはみ出した木枠はそのまま生かす方針。「作品の生き生きとしたエネルギー、生の姿を伝えられるよう修復したい」と話す。
来年の巡回展は4~6月に東京ステーションギャラリー、7~9月に同館、9~11月に道立近代美術館で開かれる。(丹羽恭太)