幻の和牛「竹の谷蔓牛」を導入 幕別の法人
【幕別】農業生産法人アイケイファーム(町千住)は、和牛の原種のひとつ「竹の谷蔓牛(たけのたにつるうし)」を道内で初導入した。代表の高橋健雄さんは、「この牛を素(もと)にブランド化した牛を生産して、地域を盛り上げたい」と話している。
蔓牛とは特に優れた和牛の系統群を指し、本州の中国地方で守られてきた種。中でも岡山県の新見市で誕生した竹の谷蔓牛は日本最古の蔓牛とされている。肉は赤身のうま味が強く、ほどよい霜降りが特徴だ。
牛の存在を2年前に知った高橋さんが、竹の谷蔓牛研究会(新見市神郷)の平田五美代表を訪問。最初は警戒されたが、何度も足を運び信頼関係を築き、導入にこぎ着けた。
現在、竹の谷蔓牛を国内で飼育しているのは原産の新見市のほか、宮崎県川南町の1件と幕別のみとなっている。
アイケイファームには7カ月の雄1頭と、12~14カ月の雌2頭が11月8日に到着。同社が飼育を委託する、安彦牧場(町日新、安彦芳一代表)の牛舎でのんびりと過ごしている。「長旅の疲れもあっただろうが牛舎に入るとすぐに落ち着き、北海道の気候にも慣れた様子」と語る。
11月25日には町内の飲食店で試食会を開き、関係者らが“幻の牛”を味わった。参加者からは、「かめばかむほどうま味が出る」「脂身がおいしい」などと大好評だった。
雄牛は来春には種牛としてデビューし、雌牛は繁殖用などで飼育する。子牛の肥育期間は、一般的な和牛の約28カ月よりも半年以上長い約35~36カ月。最短でも初出荷は3年後になる見込み。
宮崎県川南町では、竹の谷蔓牛と交配させた和牛を「いぶさな牛」のブランド名で生産しており、高橋さんも独自ブランド牛の開発を模索。ブランド化のあかつきには「十勝白人(ちろっと)牛」と名付ける予定だ。
高橋さんは「蔓牛の血を引いた牛を地域で生産し、加工や販売まで行う6次産業化につなげたい。この牛を食べるために幕別を訪れるような形にして、地域活性化の一翼を担えたら」と話している。(折原徹也)