不規則な避難所開設で住民混乱 帯広市
台風10号に伴う避難所開設をめぐり、帯広市が一部地域で防災マップとは異なる運用をし、住民の間で混乱を招いていたことが分かった。市は「今回に限った緊急的な対応」とするが、災害対応は常に緊急を要するもので、備えの甘さを露呈する結果となった。
市は8月30日午後6時、西5北5の伏古川沿いで内水氾濫の恐れがあるとして、近隣の5町内会を対象に避難準備情報を発表。この際、防災マップや防災計画に従えば、第一中と市役所を避難場所とすべきところを、北栄小のみ開設した。市は「対象となった5町内会からは北栄小が近かったため」(総務課)とする。
さらに、十勝川に氾濫危険情報が出された後の同31日午前3時45分には、十勝川沿いの地域を対象に避難勧告を発令。十勝大橋付近の23町内会約2960人に対して、浸水想定区域にあり、洪水時の避難所には指定していない総合体育館に避難するよう喚起した。
避難時に洪水に巻き込まれる危険を避けるため、市は昨年12月に防災計画を改正。想定される浸水高が高い地域の施設でも、2階以上に避難(垂直避難)できる施設は洪水時の避難所として使用することとした。第一中、東小などがそれに当たるが、同体育館は新しい計画によっても洪水時は使えない。市は「緊急性があり、体育館にも2階に観覧席などがあることから判断した」(同)とする。
一方、同体育館周辺住民が本来、洪水時に避難すべき市役所は、同5時50分頃まで避難者を受け入れなかった。防災マップに従って市役所に避難した住民の1人は「駐車場に鎖が掛かっていて入れなかった。北栄小に行くように言われた車椅子の住民もいた」と憤る。町内会役員の中には、同体育館と北栄小を行き来して住民の安否確認に追われた人もいた。
市側としては、風雨が強い中での夜間の避難だったことなどを考慮し、可能な限り近くの避難所に誘導したい考えだったが、防災マップとは異なる運用が混乱につながった。その他にも、東小などでの垂直避難が可能になったことが十分に周知できず、マップと勧告で避難場所が異なることに混乱した市民もいた。同課は「イレギュラーな判断が結果的に混乱を招いてしまったことは反省点。雨風の中では広報車での周知も難しかった。混乱の要因を分析する」としている。
(丹羽恭太)
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