新得の土器 研究に一石 釧路市再調査
【新得】1959年に新得町上佐幌地区で発見された土器片269点について、釧路市埋蔵文化財調査センターが研究結果をまとめた。主に本州や道南で多くみられ、十勝での発見例が少ない亀ヶ岡式や円筒上層式に似た縄文土器が一部あり、同センターは「もし他の地域から持ち込まれた土器であれば、その伝播ルートをたどる上で貴重」としている。
土器が発見されたのは旧佐幌小の北西に位置し、東側には上佐幌川が流れる場所で、現在は畑として利用されている。同校に通う児童が土器片を見つけたのをきっかけに、当時、同校教諭だった向守行さん(78)=芽室町在住=が、旧釧路市立郷土博物館(現・同センター)に連絡。試掘作業が行われ、63年に一度結果が報告されている。
今回は後任の担当者が昨年、発見された土器片の一部に十勝での発見例が少ないものが含まれていることを知って、詳細を分析。269点のうち、バケツ型の円筒上層式(縄文時代中期前葉)の影響を受けた1点、亀ヶ岡式(同晩期)に似た1点に着目した。
円筒上層式については十勝では幕別町の日新F遺跡に次いで2例目。帯広百年記念館によると、亀ヶ岡式に似た土器片は少ないながらも発見されているが、「非在地産の亀ヶ岡式土器は道東にはまだ例がない」(同センター)としている。
同センターの石川朗主幹は「その場所で作られたか、持ち込まれたものかは断定できない」とした上で、日高山脈東側のふもとである新得で発見されたことに着目。「もし非在地産であれば、どのように新得に持ち込まれたのかを探る上で貴重な資料となる」と話している。
59年に発掘された土器片は同センターから新得町に提供される予定。向さんは「発見してから長い年月が経ったが、新得町の貴重な歴史遺産として残っていってほしい」と話している。(深津慶太)