テンサイ褐斑病抵抗性極強品種の省力防除法
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ
北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
1.背景と目的
病害虫防除をはじめ農薬の散布回数の多いてんさい栽培を持続可能にするためには、省力的な防除技術が求められており、テンサイ褐斑病抵抗性極強品種を活用した省力的な褐斑病防除技術を確立する。
2.試験の方法
1)テンサイ褐斑病抵抗性極強品種における褐斑病発生の特徴
ポット試験や圃場試験において褐斑病の初発日や発病の推移から「カーベ8K839K」(褐斑病抵抗性極強)における褐斑病の発生の特徴を明らかにした。
2)テンサイ褐斑病抵抗性極強品種における褐斑病に対する防除期間
「カーベ8K839K」における褐斑病防除の開始時期および終了時期を明らかにした。
3)テンサイ褐斑病抵抗性極強品種における褐斑病に対する防除期間短縮の効果
「カーベ8K839K」における防除期間の短縮による防除効果および収量を、標準的に防除した「カーベ2K314」(抵抗性強)(標準区)およびそれと同じ防除期間とした「カーベ8K839K」(対照区)と比較した。さらに、帯広市現地圃場の「カーベ8K839K」において、防除期間短縮の効果を慣行防除との比較により実証した。
3.成果の概要
1)褐斑病抵抗性の異なる品種をポットで栽培し、褐斑病菌を接種した結果、接種から病斑形成に要する日数に品種間差は認められなかったが、極強品種に形成された病斑数は強品種よりも少なかった(表1)。
2)圃場における抵抗性極強品種の褐斑病の初発日はかなり強、強、およびやや強品種よりも概ね遅かった。その差はそれぞれ9日、8日、および14日以内であった(データ省略)。
3)極強品種の無処理区では初発後の褐斑病の進展は緩慢で、強品種およびかなり強品種よりも発病度が低く推移した。しかし、9月以降に甚発生となり、大きく減収する事例があった(データ省略)。
4)極強品種における褐斑病防除の散布開始時期を検討した結果、発病株率が100%に達してから散布開始した場合、防除効果は著しく劣った(表2)。一方、発病株率が50%に達する前に散布開始した場合、発病度は初発直後から散布した場合と同様に推移し、最終的な防除効果が劣る事例があったものの、対照区との間に糖量の有意な差はなかった(表2)。
5)散布終了時期を検討した結果、8月11日以前に散布を終了した場合、防除効果は顕著に低下し、糖量が10ポイント低下する事例があった(表3)。一方、8月20日以降に散布終了とした場合、対照区と比較して、防除効果は概ね同等であり、同程度の糖量が得られた(表3)。
6)以上のことから、抵抗性極強品種では、散布開始を発病株率が50%に達する前、散布終了を8月下旬として、防除期間を短縮することにより、省力的に褐斑病を防除できると判断した。
7)抵抗性極強品種では、6)の期間の防除により強品種の標準区よりも褐斑病の発病が少なかった(表4)。極強品種の対照区と比較して、防除効果は劣る傾向であったが、収量は同程度であった(表4)。
8)現地圃場における6)の期間の防除による防除効果は慣行防除よりも劣ったものの、同程度の収量が得られ、抵抗性極強品種で省力的に褐斑病を防除できることが実証された(表4)。
9)発病株率50%に達する日は、初発日から15日後以降であり、初発が早い場合でも概ね7月20日以降であった(データ省略)。このことから、発病株率が50%に達する前に散布を開始するには、初発日が7月5日以前の場合は7月20日、7月6日以降の場合は初発日の15日後を目安とする(図1)。
4.留意点
本省力防除法は、「カーベ8K839K」並の抵抗性を有するテンサイ褐斑病抵抗性極強品種に活用し、用いる殺菌剤はマンゼブ水和剤(400倍液の14日間隔散布)かそれと同等の防除効果を有するものを選択する。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 生産技術グループ
電話(0155)62-2431
Email:tokachi-agri@hro.or.jp
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