食を育む北海道の耕地土壌の現状
道総研 中央農業試験場 農業環境部 環境保全グループ・生産技術グループ
上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
道南農業試験場 研究部 生産技術グループ
十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
酪農試験場 草地研究部 飼料生産技術グループ・天北支場 地域技術グループ
1.背景と目的
北海道耕地土壌の理化学性の実態、変化の方向および土壌管理のための留意点を明らかにし、適正な土壌管理および土壌肥沃度の維持に役立てる。また、道内の耕地土壌に貯留された炭素量と変動実態を明らかにする。
2.試験の方法
1)北海道耕地土壌の理化学性の実態・変化とその対応
試験項目:①実態調査:1999~2023年の間4年を1巡として6巡調査。2020~2023年は533地点。調査項目は作土深、心土ち密度、仮比重、作土の化学性。これ以前(1959~1998年)の調査データも活用する。
2)北海道耕地土壌の炭素貯留量
試験項目:①実態調査:2020~2023年に533地点にて、30cm深までの土層深、仮比重および炭素濃度から貯留量を算出する。②有機物施用試験:2013年~、中央農試(低地土;緑肥と堆肥の有無;たまねぎ連作)、十勝農試(黒ボク土;残渣鋤込と堆肥の有無;4畑作物輪作、2020年迄)および酪農試(黒ボク土;堆肥とスラリーの有無;飼料用とうもろこし連作及び牧草)で実施。これ以前(2008~2020年度)の継続課題のデータも活用する。
3.成果の概要
1)土壌診断基準値に照らした現状評価(表1):[水田]pH基準値未満地点が5割、有効態リン酸超過や可給態ケイ酸不足地点が8割以上存在した。[普通畑]作土深が薄い地点と心土が堅密な地点が5割強。交換性カリ・有効態リン酸が超過の地点が6~7割存在。[野菜畑]作土深が薄い地点が6割、心土が堅密な地点、pHが低い地点が4割、交換性カリ超過の地点が8割、有効態リン酸がたまねぎ基準に照らしても超過の地点が5割存在した。[草地]交換性カリと苦土の超過地点が各6割と8割、有効態リン酸超過の地点が4割存在した。これらに留意した圃場管理、物理性改善、施肥対応が望まれる。
2)畑地では、転換畑地帯の空知で作土深が浅く、オホーツクで特に有効態リン酸や交換性カリが高い等の地域性が認められ(表2)、地域的な営農形態や作付け作物種の違いが影響していると思われた。
3)施肥対応基準と肥料出荷量やアンケート調査による施肥実態を基に、有機物施用を考慮せず推定した全道におけるリン酸の減肥可能量は、水田ではリン酸2,463t、普通畑の主要5作物合計で7,329t(てん菜5,592t)と試算された。カリは共にマイナスとなり減肥不要な水準に達したと想定された(データ略)。
4)道内耕地30cm深の土壌炭素貯留量は全作目・全土壌平均で111.2t/haであり、牧草を除いて作目間差は小さく土壌間差が大きかった(泥炭土172>火山性土128>台地土95≒低地土88)(表3)。
5)道内の土壌区分別の作目別面積推定値と作目別土壌別炭素貯留量から全道耕地114万haの炭素貯留総量を132.1Tg(CO2で4.85億t)と推定した(表3)。これは道内での年間CO2排出量(2019年)の約10倍に相当する。この炭素貯留総量は2014年試算値より9%低下し、2021年試算値とほぼ同等である。
6)2008~2023年に同一作目の継続125定点における炭素貯留量変化は、泥炭土で貯留量が減少し、火山性土で微増する傾向であった。作目別では明らかな変化傾向はなかった。
7)有機物無施用での土壌炭素貯留量は、低地土と多腐植の黒ボク土で漸減し、少腐植の黒ボク土で微増した。緑肥や残渣よりC/N比の高い牛ふん麦稈堆肥では炭素貯留の効率が特に低地土で高かった(図1)。
4.留意点
特になし
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道総研中央農業試験場 環境保全グループ
電話(0123)89-2582
Email:central-agri@hro.or.jp
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