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冬季の哺育牛舎における安全性の高い除菌剤による煙霧消毒の効果

道総研畜産試験場 畜産研究部 家畜衛生グループ

1.試験のねらい
 冬季における牛舎の呼吸器病対策として、グルタルアルデヒドを微細粒子状にして噴霧する煙霧消毒を実施している。しかし、グルタルアルデヒドは毒性が強く、煙霧消毒のような空間消毒では、人畜に安全な代替資材が求められている。また、消毒剤は一般的に低温下で効果が減弱するが、冬季における煙霧消毒の有効性については十分な検証がなされていない。
 そこで、本研究では、牛舎内の煙霧消毒において、従来用いられてきたグルタルアルデヒドに代わる安全性の高い代替資材の効果を検証する。また、これらの代替資材について、哺育牛舎の低温環境下における殺菌効果を明らかにする。

2.試験の方法
1)冬季の牛舎において従来から使用されているグルタルアルデヒドおよび代替資材として安全性の高い次亜塩素酸水と亜塩素酸水の煙霧消毒を実施し、空気中細菌に対する殺菌効果を検証する。
2)面積の異なる牛舎で噴霧量を変えて煙霧消毒を実施し、牛舎面積に応じた噴霧量を明らかにする。
3)冬季の農場において構造や環境条件の異なる哺育牛舎で煙霧消毒を実施し、有機物存在下における空気中細菌の殺菌効果を検証する。

3.成果の概要
1)低濃度においても全ての除菌・消毒剤で空気中細菌数を90%減少したことから、次亜塩素酸水および亜塩素酸水はグルタルアルデヒドと同等の殺菌効果が認められた。(図1)
2)噴霧量1Lでは、いずれの牛舎においても顕著な殺菌効果は認められなかった。噴霧量2LではA農場-哺育1およびB農場-哺育1において、噴霧1時間後に空気中細菌数が90%減少した。噴霧量5Lではすべての牛舎で噴霧1時間後に空気中細菌数が90%減少した(図2)。噴霧量1L当たり牛床面積100~140mで殺菌効果が認められたことから、煙霧消毒の除菌・消毒剤の噴霧量の基準として、牛舎面積100mあたり1Lと設定した。一方で、噴霧後24時間後には空気中細菌数が噴霧前のレベルまで増加したことから、殺菌効果を最大限引き出すためには1日の管理作業終了後に煙霧消毒を実施することが有効と考えられた。
3)空気中粒子数の推移から煙霧消毒により噴霧された除菌・消毒剤は、1~2時間後に空気中から消失することが確認された(データ略)。試験を実施した7つの哺育牛舎のうち、グルタルアルデヒドおよび次亜塩素酸水は5つの牛舎で、亜塩素酸水は6つの牛舎で噴霧終了1~2時間後に空気中細菌数が減少し殺菌効果が認められたことから、低温下の哺育牛舎においても次亜塩素酸水および亜塩素酸水はグルタルアルデヒドと同等の殺菌効果が認められた(図3)。
 安全性試験等のデータから、本試験で用いた除菌・消毒剤はグルタルアルデヒドと比較し、安全性が高く、次亜塩素酸水および亜塩素酸水は煙霧消毒における代替除菌剤として有効であることが確認された(表1)。

4.留意点
1)冬季の哺育牛舎で煙霧消毒を実施する際の知見として活用される。
2)本試験における牛舎内の最低気温は-6.7℃であったことから、当該温度を下回る環境下での効果については追加の検証が必要である。
3)噴霧24時間後には空気中細菌数が噴霧前のレベルまで戻っていることから、効果的な衛生管理のためには毎日の煙霧消毒の実施が推奨される。


詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研畜産試験場 畜産研究部 家畜衛生グループ 平野佑気
電話 0156-64-0615 FAX 0156-64-5349
E-mail hirano-yuuki@hro.or.jp

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