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プラスチック被覆肥料に頼らない ばれいしょ・てんさいへの代替資材

道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
    上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
    北見農業試験場 研究部 生産技術グループ

1.背景と目的
 肥効調節型肥料は施肥の省力化や、窒素流亡の防止に有効とされ、特にプラスチック被覆を使用した被覆肥料は多くの作物で使用されている。しかし、溶出後の被膜殻の海洋への流出が問題となり、その対応として代替資材の活用が求められている。そこでばれいしょ、直播てんさいに対してプラスチックを用いない肥効調節型肥料の窒素溶出特性と施用効果を検討し、利用可能な資材を明らかにすることを目的に試験を行った。

2.試験の方法
1)肥効調節型肥料の窒素溶出特性の解明
 各種の肥効調節型肥料について、屋内での培養試験により窒素溶出特性を明らかにする。
供試肥料:
硝酸化成抑制剤入り肥料:1-アミジノ-2-チオウレア0.5%尿素(ASU0.5)、同2.0%(ASU2.0)
化学合成緩効性肥料:ウレアホルム2モル(UF2)、ハイパーCDU短期(HCDU短)
プラスチック被覆肥料:セラコート(R)R25(CR25) 速効性肥料:尿素
2)畑作物に対する肥効調節型肥料の施用効果
 各種肥効調節型肥料の圃場での特性と、作物に対する施用効果を明らかにする。
共通:全量作条施肥
ばれいしょ(総窒素施肥量12kg/10a。内9kg/10aは速効性肥料を用いて施肥)
試験区:速効性肥料、ASU0.5、ASU2.0、HCDU短、UF2、CR25
直播てんさい(肥効調節型肥料区は総窒素施肥量18kg/10a。内6kg/10aは速効性肥料を用いて施肥)
試験区:速効性肥料(基肥4kg/10a+尿素分施14kg/10a)、ASU0.5、HCDU短、UF2、CR15

3.成果の概要
1)直播てんさいとばれいしょの追肥時期における無機態窒素溶出率は、尿素=ASU0.5=ASU2.0>UF2>CR25>HCDU短の順であった(表1)。ただし硝酸化成抑制剤入り肥料では、濃度に応じて硝酸化成は抑制されており、尿素と比較して無機態窒素中の硝酸態窒素の割合は低かった。
2)①ばれいしょの規格内収量は、ASU0.5とHCDU短で速効性肥料、CR25と比較して低かった(表2)。ASU0.5は規格内収量の年次間差が大きかった(速効性肥料比87~103)。HCDU短は目標となる収穫時塊茎窒素吸収量10~11kg/10a(H29年指導参考)を3ヶ年中2ヶ年で下回った。一方、ASU2.0とUF2の規格内収量は速効性肥料、CR25と同等以上であり、窒素吸収量も目標を上回ったが、ASU2.0は規格内収量の年次間差(速効性肥料比:98~112)が大きかった。
  ②直播てんさいにおける土壌無機態窒素の最大溶出時期は、資材で差は無く同等であった(図1)。
  ③6月下旬の草丈は処理間に差はなかったが、窒素吸収量はASU0.5でやや高く、UF2で低かった。収穫期の根重は、UF2、HCDU短で高く、ASU0.5はCR15と同等であった。糖量はUF2で最も高く、次にHCDU短、CR15、ASU0.5の順であった。窒素吸収量はいずれの試験区もCR15と同等以上であった(表3)。
  ④直播てんさいの基肥全量作条施肥では、酸性障害および濃度障害を回避できる資材特性が求められる。ASU0.5は施肥位置周辺のアンモニウム態窒素濃度が高く維持されることから、特に濃度障害の発生が懸念される。
 以上から、ばれいしょに対してはASU2.0またはUF2、直播てんさいに対してはUF2またはHCDU短が有効であると判断された。

4.留意点
1)プラスチックを用いない肥効調節型肥料を選択する際の参考とする。
2)ばれいしょにおける成果は熱水抽出性窒素2.7mg/100g以下の低肥沃度圃場で得られた成果である。
3)直播てんさいに対して作条施肥する際は酸性障害、濃度障害回避のため施肥位置に注意する。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 生産技術グループ
電話(0155)62-2431
Email:tokachi-agri@hro.or.jp

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