持っているものを見直し、恵みに感謝する~十勝の幸せな未来(2)
私は時々、自分の仕事が医師のようだと感じます。企業や団体に入り込み、現状を観察し、多くの質問を通じて「どうすればより良くなるか」を考え続けます。これは、患者に寄り添い、有効な治療を施す医師や看護師と同じように、専門的なアプローチと相手本位の姿勢が求められます。実は、私の息子が一歳の時、急病で命の危機に瀕しましたが、親身に支えてくださった医師や看護師のおかげで今は元気に過ごせています。この経験を通じて、普段の生活の尊さを痛感し、日常への感謝を学びました。また、心を尽くして働く姿勢を目の当たりにし、私の専門職としての仕事観も大きく変わりました。
コロナ禍以降、悩みを抱える人や業績不振の企業が増えています。打開するための最初のステップは、自分や自社がすでに持っているものを見直すことです。個人にとっては、健康な体や心、家族や友人との関係、これまでの学びや経験が大切な財産です。企業にとっては、事業を支える設備や技術、社員の能力、そしてお客様からの信頼が貴重な経営資源です。まさに「足るを知る」ですが、現代ではこれがなかなか難しいのです。
私たちは時に上昇志向に駆られ、無い物ねだりになりがちです。あるいは、感情に囚われると視野が狭まり、選択肢が乏しいと感じてしまうこともあります。しかし、そんな時こそ「自分にはこれがある」「こんなに素晴らしい時間を過ごせている」「お客様から喜びの声をいただけた」と、すでに得ているものに目を向けてみましょう。そうすれば、現状のありがたさに気づけます。
また、十勝には美しい自然や豊かな文化、先人たちによる開拓の歴史、そして整ったインフラがあります。こうした社会経済基盤のおかげで、皆様は日々の生活を送り、仕事に打ち込むことができています。私も18歳まで十勝でのびのびと成長でき、今の自分があると感じています。過去を振り返りながら、「こんなにも多くを与えられてきた」とその恵みに気づき、感謝できるかどうかが大切です。「もっと欲しい」「これが足りない」と求め続けるのではなく、自分や自社がすでにどれほど満ち足りているかに気づけると、幸せの本質が見えてきます。そして「今、とても満足だなあ」と感じる時間が増えるほど、成功への道も開かれていくでしょう。
<本田光(ほんだ・ひかる)>
1980年清水町生まれ。清水小、芽室中、帯広柏葉高、広島大学大学院・社会科学研究科博士課程後期単位取得退学。ブランディングとマーケティングの方法論を軸に、さまざまな業種の企業の経営改善や組織改革、事業開発などに携わる。父親は絵本作家の本田哲也さん。
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