スマート農機の採算性~自動操舵とセクションコントロール~
道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ
1.背景と目的
大規模化に伴い能率重視の技術選択が進む中、オペレータ(以下OP)不足による生産性の低下や変形圃場集積による資材の重複散布がみられる。この課題に対応可能な技術として、自動操舵システムやセクションコントロールが期待されている。そこで、本研究では自動操舵システム、セクションコントロールを対象とし、導入・利用実態を把握して、導入効果を評価するとともに、各技術の導入に向けた判断基準を示すことを目的とした。
2.試験の方法
1)自動操舵システムの導入効果と経営評価
自動操舵の導入効果を評価するとともに、導入で所得増大が期待できる経営条件を提示する。
(1)自動操舵システムの導入効果 対象:畑作経営50ha規模、70ha規模、各4戸
聞き取り調査項目:経営概要、自動操舵の評価点、自動操舵の利用実態、労働時間等
(2)自動操舵システムの経営評価:線形計画法、年間の利用下限面積(代表的な機種で試算)
2)セクションコントロールの導入効果と経済性評価
セクションコントロール搭載のブロードキャスタとブームスプレーヤの資材削減効果を明らかにする。
(1)現地畑作圃場におけるセクションコントロールの資材削減効果
実施項目:1筆あたりの資材余剰散布量測定、余剰散布領域特定、資材削減割合推定
(2)セクションコントロールの経済性評価:年間の利用下限面積(代表的な機種で試算)
3.成果の概要
1)自動操舵の導入効果として、経営主の配偶者等の未熟練者が新たなOPとして従事するといったOPの創出、掛け合わせ幅の減少等の投下労働時間の低減、心身の負担軽減等が確認された(データ略)。これらのうちOP創出効果に注目すると、畑作4品70ha規模経営では、配偶者がOP従事できるようになることで、4月~5月や9月の繁忙期のOP作業を分担でき(図1)、労働集約的かつ高収益な作物であるてんさいや生食・加工用ばれいしょ等の作付面積を維持した大規模化に対応できていた(データ略)。
2)保有労働力2名・畑作4品の経営で自動操舵1台導入を想定したモデル分析の結果、導入前に比べ50haまでは作付構成に対するOP創出の影響は小さかったが、導入後は規模拡大してもてんさい、生食用ばれいしょ、金時の作付面積の維持が可能となった(表1)。また70haまで拡大すると、未導入では不作付の面積が生じるのに対し導入後は発生せず、所得が478万円増加した。自動操舵の利用下限面積は56.7haであり、それ以下では所得に対する効果は得られなかった。作業負担の軽減効果は経営耕地面積規模によらず高く評価されていた(データ略)。
3)セクションコントロール導入前の施肥および農薬散布において、本畦と枕地の境界部、曲線部掛合せ、圃場外で余剰散布領域がみられた(表2)。セクションコントロール導入前の余剰散布割合を測定すると、施肥で9~25%、農薬散布で0~21%となった。圃場形状や作業条件を用いた余剰散布割合推定手法を作成し、導入後の余剰散布割合を推定すると、導入による資材削減効果は変形圃場で高く、施肥で8~25%、農薬散布で0~21%と試算された。本手法で圃場毎の推定値から経営全体での資材削減効果を推定できる。
4)畑作経営においてセクションコントロール対応作業機を導入する場合、スプレーヤの利用下限面積は経営全体での資材10%削減で59.1ha、資材20%削減で29.5haとなった(表3)。機械式ブロードキャスタの更新に伴う導入時の利用下限面積は、資材25%削減で70haとなるが、既往の成果に基づく可変施肥の増収効果を加えて試算すると、34.1haとなった。自動操舵システム保有の畑作経営において電子制御式ブロードキャスタの更新に伴う導入時の利用下限面積は資材25%削減で20.9haとなった。
4.留意点
自動操舵システムとセクションコントロールの経営・経済性評価は、道東畑作地帯対象の結果である。
詳しい内容については、次に問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 農業システムグループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp
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