乳牛のエサ設計に役立つ~粗飼料のデンプン・繊維消化率の推定 (2)乾草および低水分牧草サイレージの繊維消化率
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
道内で広く使われている飼料設計プログラムには中性デタージェント繊維(NDF)消化速度が組み込まれているものがあり、その算出にはルーメン液で30、120、240時間培養後のNDF消化率が必須の入力項目となっている。本研究では、乾草および低水分牧草サイレージのin vitro NDF消化率を予測する近赤外分光分析(NIRS)検量線を開発する。
2.試験の方法
1)水分30%未満の乾草と低水分牧草サイレージのin vitro培養30時間後の可消化NDF、in vitro培養120および240時間後の未消化NDFを予測するNIRS検量線を作成する。
3.成果の概要
1)dNDF30hを予測する検量線作成用サンプル群のdNDF30h含量の実測値は、平均31.1±4.2、最小23.2、最大40.3であった。作成したNIRS検量線の検証用サンプル群でのEI値による精度判定は「B(高い)」であった(表1)。
dNDF30hを予測する検量線のBiasは-0.50(全体としてやや過少評価となる傾向)であったが、その値はSEPよりも小さく、NIRS検量線の予測誤差の範囲であった(表1、図1)。
uNDF120hおよびuNDF240hを予測する検量線作成用サンプル群の実測値はuNDF120h: 平均19.8±6.3、最小8.8、最大35.0、uNDF240h:平均18.6±6.2、最小7.8、最大32.5であった。作成したNIRS検量線の検証用サンプル群でのEI値による精度判定はいずれも「B(高い)」であった。
uNDF120h、uNDF240hのBiasはそれぞれ-0.55、-0.77(全体としてやや過少評価となる傾向)であったが、いずれの値もSEPよりも小さく、NIRS検量線の予測誤差の範囲であった(表1、図2、図3)。
本試験で作成した検量線と既存の牧草サイレージ用検量線とで予測精度を比較すると、いずれの形質についても本試験で作成した検量線の方がEI値は低く、予測の精度が高かった(表1)。
本試験で作成した検量線の適用対象外とする基準として、NDF消化率の予測値が各培養時間間で逆転した場合およびNDF消化率の値が負となった場合とを暫定的に定めた。分析機関におけるこのような試料の出現頻度は1.6%および0.4%であり、その他の一般分析項目で発生する異常値の出現頻度と比較して同程度~やや低い傾向であった。
4.留意点
1)開発されたNIRS検量線は、北海道向けに粗飼料分析を行っている10機関が参画するフォレージテストミーティング(FTM)に導入される。本NIRS検量線を用いた分析値はFTMの粗飼料分析サービスを通じて、個別農家やTMRセンターに提供され、飼料設計や給与診断などに活用される。
2)本検量線は、水分含量30%未満のイネ科乾草および低水分牧草サイレージに適用する。
3)本NIRS検量線の適用範囲は、多様な産地、草種、調製条件を含むものであるが、適用の対象外として、NDFDの予測値が各培養時間間で逆転した場合およびNDFDの値が負となった場合はNDF消化率の分析値を提供できないことがある。
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道総研畜産試験場畜産研究部飼料生産技術グループ 角谷芳樹
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