推奨播種量でコスト削減、牧草収量UP!
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ
1.要約
十勝においてチモシー(TY)慣行播種量(2.0kg/10a)の5~6割である推奨播種量(1.0-1.2kg/10a)による草地更新を実証した。推奨播種量は、適期適正に草地更新することで、慣行播種量に比べ、播種翌年1番草で増収し、倒伏は少ない傾向であり、3年目以降も良好なTY草地を維持した。また、播種量によらず適正な更新作業が重要なことが再確認された。
2.試験のねらい
平成31年指導参考事項「オホーツクおよび根釧地域における牧草播種機を利用した夏播種条件下でのチモシー主体草地安定造成のための播種量」について、十勝地域において実証し、地域への技術導入を促進する。
3.試験の方法
場所:上士幌単播(R1,3年播種)、芽室混播(R1,2,3年播種)、本別混播(R2,3年播種)、新得(畜試)単播・混播(R1年播種)、大樹混播(R2年播種_処理区なし参考)
処理:慣行区(TY2.0kg程度/10a)、処理区(TY1.2kg程度/10aおよび一部地域でTY1.5kg程度/10a)。混播の種子組み合わせ比率は慣行区と同様、ただし、R1年畜試混播のマメ科播種量は定量とした。また、本別R3年播種はTY1.2kg,1.4kg,1.5kg,1.6kg/10aの4処理でTY2.0kg/10aは未設置。
調査項目:越冬前(個体数・茎数)、越冬後(個体数・茎数)、播種翌年以降収量(1番草・2番草)、倒伏等
4.成果の概要
(1)播種量試験を行った9圃場のべ26処理のうち、21処理で播種後の初回調査(播種後約1か月)でTY個体数が最も多くなり、その後越冬前(11月初旬)に向け個体数が減少した。初回調査の個体数が最多とならなかった5処理は、播種機備え付けの鎮圧以外に追加で鎮圧していない処理が3処理(未鎮圧6処理中)、播種時雑草過繁茂であった処理が2処理(雑草過繁茂3処理中)であった。種子の出芽定着には、鎮圧や播種床を雑草で過繁茂させないなど基本技術が重要であることがあらためて確認された。
(2)適期適正に播種した5圃場では、定着時のTY個体数は播種量に対応した。その後、各区とも個体数は減少するが、TY播種量1.0-1.2kg区では減少が小さく、また、個体の生育が旺盛で個体茎数が多くなり、越冬前茎数は3000本/m2以上確保された(表1)。一方、9月下旬(とうもろこし収穫後)に播種した事例では、播種後の有効積算気温が確保されないため、ほとんど分げつせず、個体数≒茎数であった(データ略)。
(3)播種時期が9月下旬と遅い芽室では、播種量を慣行のTY2.0kg/10aからTY1.0kg/10aに削減することで収量は同等から1割減であった。適期に播種したその他の圃場は、慣行のTY2.0kg/10a播種に比べ、TY1.0~1.2kg/10a播種において多収(5圃場平均慣行比110%)であった。1番草は、推奨播種量で慣行に比べ、茎数は少ないが、1茎重が重いことにより、増収した。2番草は茎数・茎重に播種量による顕著な差は確認されなかったが、収量は推奨播種量で多い傾向であった(表2)。
(4)TY播種量を削減すると播種翌年1番草の倒伏の発生が少ない傾向であった(図1)。
(5)適期適正に播種した圃場において、TY1-1.2kg区の収量は、播種2年目で慣行(TY2.0kg)区比1.11、播種3年目で慣行区比1.04、播種4年目で慣行区比1.05であり、播種翌年の増収効果が最も高く、利用3年(播種4年)目においても増収した(図2)。また、草種構成は、概ねTY主体の草地が維持されており、播種量による顕著な違いは無かった。混播草地(本別R2播種)のマメ科冠部被度は10%以下で推移し、播種量による顕著な違いは無かった。一方、畜試混播圃場においては、播種床処理を未実施であったため更新3年目には元のリードカナリーグラス主体草地へ戻り、播種量によらず適正な草地更新が重要であると再確認された(データ省略)。
(6)本実証における3戸の協力農場・経営からは「TY播種量1.0-1.2kg/10aで草地更新可能と実感した」との評価を受け、3経営ともTY播種量1.0-1.2kg/10aによる草地更新を継続する予定。また、本別においては、協力農場以外の農場においても推奨播種量TY1.2kg程度を実施する動きがある。
5.留意点
1)十勝における草地更新時の播種量決定の参考にする。
2)適切な播種床造成や鎮圧作業など、適正な草地更新が重要である。
詳しい内容については下記にお問い合わせください。
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ 渡部敢
電話 0156-64-0626 FAX 0156-64-5348
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