冬のハウス管理が決め手 てん菜の西部萎黄病対策
十勝農試 研究部 生産環境グループ
北農研センター 生産環境研究領域
畑作基盤研究領域
1.背景と目的
てん菜の西部萎黄病(以下、本病)は、ビート西部萎黄ウイルス(以下、BWYV)の感染によって発病するウイルス病で、その媒介にはアブラムシ類が関与し半永続的に伝搬されることが知られている。本病は、1960年代に道内の多くの地域で発生が確認されていたもののその後は少なく推移していた。しかし2009年頃から再び全道的に多発傾向が続いており、てん菜の主要な減収要因となっている。
本課題は、本病の病原ウイルスBWYV とその媒介虫の生態を調査するとともに、得られた知見を活用して本病を抑制する技術を確立することを目的として実施した。
2.試験方法
1)BWYV の診断法の確立と特性調査
2)病原ウイルスを媒介するアブラムシ種の特定
3)西部萎黄病の発症と被害の特性調査
4)越冬ハウスの適正管理による西部萎黄病の抑制効果の検討
5)十勝管内における越冬ハウス適正管理による本病防除の実証試験
3.成果の概要
1)BWYV の診断法の確立と特性調査
植物葉からのBWYV 検出手法と、媒介虫からのDNA 抽出とBWYV 検出を同時に行う手法を確立した。また、BWYV の系統解析を行った結果、道内各地で発生する本病はすべて1つの株に由来すると推測された。
2)病原ウイルスを媒介するアブラムシ種の特定
本病発病前のてん菜ほ場に発生するアブラムシと越冬ハウス内に生存するアブラムシの同定結果、および病原ウイルス媒介能力検定試験の結果から、本病をてん菜へ伝播する媒介虫はモモアカアブラムシと特定された。また、近年多発傾向にあるマメクロアブラムシはBWYV を媒介する能力がなかった。媒介虫はハウス(用途を限定しない)等の施設内部で越冬していることが確認された一方、十勝管内で露地越冬している根拠は得られなかったことから、媒介虫の越冬場所は施設内部の植物上と考えられた。
3)西部萎黄病の発症と被害の特性調査
感染時期と潜伏期間の関係を調査した結果、感染時期によって潜伏期間は異なった(図1)。感染時期と収量の関係を調査した結果、7月20日頃までに感染した場合、糖量は30%程度減収した。
4)越冬ハウスの適正管理による西部萎黄病の抑制効果の検討
本病の抑制には、越冬ハウス内部をアブラムシ類が生存できない環境にすることが最も有効であった。越冬ハウスの適正管理を複数年継続実施することで、本病抑制効果はより高まった(図2)。
5)十勝管内における越冬ハウス適正管理による本病防除の実証試験
越冬ハウス内部を適正管理した11地域すべてにおいて、前年よりも本病が低減した(図3)。内部を適正管理できなかった越冬ハウスの近隣てん菜ほ場では、殺虫剤の灌注処理と茎葉散布を実施した場合でも本病が多発生する事例(図4)が管内の複数地区で確認された。本成果と平成24年指導参考事項から導かれる「西部萎黄病の防除方法及び注意事項」をまとめた(表1)。
4.成果の活用面と留意点
1)本成績の成果は、てん菜の西部萎黄病の発生地域における本病抑制に活用する。
2)本成績は、十勝管内で実施した結果に基づいてとりまとめた。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
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