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黒穂(メドウフォックス)に牧草地が占領されないための防除技術

道総研畜産試験場 家畜研究部 技術支援グループ・基盤研究部 飼料環境グループ

1. 試験のねらい
太平洋沿岸でイネ科の難防除雑草メドウフォックステイル(以下MFT)が優占する草地が増加している。MFTの生育特性や栄養価の変化などの特性を明らかにして、それらに基づいた防除技術を確立する。

2. 試験の方法
1)出穂、開花、種子生産および発芽能力、栄養価の変化などMFTの生理生態やの特性を明らかにする。
2)作業機械の付着残渣、法面の種子などを調査して、外部への拡散や侵入経路を把握する。
3)生育特性に基づいた、刈り取り管理による増殖サイクルの遮断(発芽能力を有する種子の落下防止)や、除草剤処理による個体の枯殺などを組み合わせた総合的な防除技術を確立する。

3. 成果の概要
1)MFTは開花から22日(節間伸長から40日程度)後に、種子が発芽能力を獲得する。
この次期より前に刈ると再度出穂する。発芽能力を有する種子は、播種100日後でも
発芽するものがある。
このことから、1番草を開花後22日以前、その後40日程度で2番草を刈り取りすることにより、発芽能力を有する種子の落下が防止でき、増殖サイクルの遮断が可能と考えられる。これらは、オーチャードグラス(OG)早生品種の適期刈り取り管理と一致するので、OG早生品種の作付けがMFTの抑制に有効と考えられる(表1、図1)。
また、MFT1番草のTDNは出穂期には74.3%であるが、その後急速に低下しOG1番草の出穂期には60.5%、チモシー(TY)早生1番草の出穂期には48.6%と推定される。
2) 作業機械に付着した残渣等に含まれるMFT種子は発芽・出穂し、表層リター中の種子は1年以上経過しても発芽能力を有する。また、法面販売・流通により個体および種子が拡散する。
外部からの侵入を防止するためには、圃場法面等に存在するMFTを作業機械で圃場に引き込まないこと、作業機械に付着した残渣等を掃除することが必要と考えられる。
3) 飼料用とうもろこし用除草剤のニコスルフロン(N)処理およびNとアトラジンの体系
処理によりMFTの出穂は認められなかった。また、2および3年目は無処理区におい
ても発生は認められなかったことから、埋土種子の寿命は2、3年程度であると考えら
れた。埋土種子を考慮すると、N処理を伴う2年以上の飼料用とうもろこしの作付けに
より、MFTの防除は可能と考えられる(表2)。
4) 草地更新において、前植生および2回の播種床グリホサート系除草剤(G)処理を実施
することで、ほとんどの個体を枯殺できるが、播種翌年に出穂する個体が認められる。
これらは、草地更新時の処理だけでは根絶が困難なため、OG早生品種を播種し、OG
早生品種の適期刈り取り管理を実施することでMFTを防除できると考えられる(表2)。
5) 更新前の2年間に種子を落とさないように早刈り管理し、更新時に前植生および播種床1回のG処理を実施した圃場ではほぼすべてのMFT個体を枯殺できる。MFTの開花後22日以前およびその後40日程度での刈り取り管理を更新前2年間に実施することにより、新たな発芽能力を有する種子を落下させず、埋土種子から発生した個体と経年個体は
G処理により枯殺することでMFTは防除可能と考えられる(表2)。
6) 上記を総合して、MFTの防除法を表3に示した。

4. 留意点
1)草地更新にチモシーを使用した場合は、刈り取り管理でMFTの種子の落下を防げないので、MFTが再度増殖する可能性がある。
2)早期刈り取りと除草剤処理を組み合わせた防除法は有効であるが、1年の実証であるので、効果の程度を検証する必要がある。






詳しい内容については下記にお問い合わせください

道総研畜産試験場 家畜研究部 技術支援グループ 佐藤尚親
電話 0156-64-0626 FAX 0156-64-5348
E-mail sato-narichika@hro.or.jp

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