大樹舞台に“夢”発射 広がる宇宙事業 新テーマで放球実験 JAXA
【大樹】町と連携協力協定を結んだ宇宙航空研究開発機構(JAXA)は昨年、大気球の放球実験、マッハ5まで加速する極超音速機のジェットエンジン燃焼実験など、数多くの実験を町多目的航空公園内で実施してきた。今年も大気球の放球実験を新たなテーマで行うなど、夢のあるテストを展開する。また町民や子供たちが宇宙事業に身近に触れる場として、昨年に続き、講演会も予定されている。(北雅貴)
JAXAは昨年5月、道内自治体では初めて、大樹町と2012年度末までの連携協定を締結。航空公園内の格納庫、大気球指令管制棟などを大樹航空宇宙実験場と命名、ここを拠点に実験を継続実施することになった。昨年8月と9月、放球実験が成功。科学的要素は盛り込まなかったが、重さや大きさを変えた計2基を上空に飛ばし、放球、管制、回収−と一連の作業の運用について実証した。
新年度は実験が本格化。ヘリウムガスが入った超極薄ポリエチレンフィルムの大気球に観測機器をつるし、さまざまな観測を行う。JAXAの吉田哲也大気球実験室長は「具体的には言えないが、天文学や宇宙物理分野で展開されるだろう」と話す。
協定には教育的支援も盛り込まれており、昨年5月と10月に講演会を開催、9月には大樹高校を対象に行った。JAXAの職員らが町民や子供らに宇宙に関する知識を伝えた。吉田室長は「(今年も)引き続き開催を考えている。研究者らとの交流で宇宙に関心を持ってもらえたら」と語る。
日米を約2時間で結ぶ極超音速機のエンジン燃焼実験も昨年11月に実施、ほぼ予定通りの成果を上げた。地上実験だったが、新年度は大気球に実験機をつるし、上空40キロで切り離した後、エンジンを燃やし、マッハ2まで加速させる試験を行う。
伏見悦夫町長は「大樹で宇宙に関する夢のある実験が盛んになりうれしい。現在1キロの(多目的航空公園の)滑走路を延長することを検討している。3キロになれば宇宙旅行の発着拠点にもなる」と、夢を膨らませている。