患者情報を多職種で共有 十勝医師会がネットワーク、300施設参加
十勝医師会(大庭滋理会長)は、管内の医療機関や介護施設が共通のICT(情報通信技術)ツールを使い患者情報を共有する「十勝医療介護情報共有ネットワーク」(愛称・とかち月あかりネットワーク)の取り組みを進めている。在宅医療が広がり、一人の患者のケアに医師や訪問看護師、ヘルパー、ケアマネジャーら多職種が関わる中で、関係者が速やかに情報共有できる体制の構築を目指している。(高井翔太)
患者情報の共有は従来、連絡帳を患者の自宅に置いたり、無料通信アプリを使用したりしていたが、利便性や個人情報の保護に課題があった。また、患者が在住するまち以外の医療・介護関係者がケアに関わることもあり、共通の情報共有ツールのニーズが高まっていた。
こうした中、同医師会が音頭を取り、管内11町村の役場や地域包括支援センター、医療機関などと、帯広市内の医療機関計21拠点で昨年9月にネットワークを構築。それぞれが関わる医療、介護関係者などで同じICTツールを利用することとした。ツールは、2018年から更別村で用いられていた「バイタルリンク」(帝人ファーマ)。比較的安価で使いやすいため採用した。
昨年12月現在で管内50の医療機関と、町村役場や介護施設、薬局など253機関・事業所が参加している。端末で患者を検索すると要介護認定の変更や、自宅に新たに医療設備を取り付けることなどの連絡事項が確認できる。医師からは、電話でその都度担当者に問い合わせるといった手間が無くなったとの声がある。
パソコンのほかスマートフォンやタブレット端末でも使用できる。秘匿性の高いメール機能もあるため、管轄する町村外の医療・介護関係者らとの情報交換の場としての利用も期待できるという。
円滑な運用に向け、今月15日に帯広市内で「第1回とかち月あかりネットワーク協議会」が開かれ、システム管理者や医師ら約30人が参加。課題を製品担当者らと共有し、改善に向け意見を交わした。同協議会を取りまとめる同医師会の山田康介副会長は、「情報共有がより容易になる。災害の備えにも利用できる」と意義を強調。一方で、ICTツールに不慣れな医療・介護関係者もいることから、「挙がった問題点を整理し、今後利用を促進していければ」と話した。大庭会長は「このネットワークを全十勝に広げていきたい」としている。