養護施設に毎月寄付して40年余り、図書カードと手紙 帯広の紳士服「dan」の三木さん
帯広市西3南17の老舗紳士服店「dan(ダン)」を経営する三木秀雄さん(79)は、市内の児童養護施設「十勝学園」(山本敏博施設長)に毎月3000円分の図書カード(図書券)を寄付している。活動は40年余りにわたる現代の“あしながおじさん”。その総額は150万円を超す。家庭環境の理由で施設に入所している児童・生徒の書籍や文房具購入費に充てられており、三木さんは「子どもたちには自身を支え、見守ってくれる人がいるという愛情を感じ取ってもらえれば」と優しい表情で話す。(山田夏航)
予算不足知り父の思い継ぐ
三木さんが同施設への寄付を考えたきっかけは1980年ごろ、十勝毎日新聞に掲載された一つの記事だった。「十勝学園の前身に当たる平原学園に予算がなく、子どもたちの文房具が購入できない状況だと書いてあった」
記事を見た瞬間、「社会に出たら世の中のためになることをしなさい」と、既に病気で亡くなっていた父・光吉さんから聞いていた言葉が頭に浮かんだ。「寄付をしよう。私が人生でやるべきことはこれだ」と思い付いた。
それからすぐ、「わざわざ自分であることを伝える必要はない」と、“あしながおじさん”として同施設に匿名で図書券と、「体に気を付けて」などの子どもたちを気遣う直筆の手紙を郵送し始めた。
十勝学園の1500冊購入に貢献
しかし、継続して30年たったころ、思わぬ形で出どころが知られた。「danと記載された会社の封筒を誤って使い、送ってしまった。それで十勝学園の皆さんが私だと分かってしまった」と、照れくさそうに当時を振り返る。それ以後は名前を明かして活動している。
同施設の山本施設長(52)は「これまでずっと図書カードを送ってくださり、子どもたちを含め本当に感謝している。こんなによくしてくださる方はなかなかいない」と述べる。同施設の図書室に並ぶ約1500冊の文庫本や漫画の多くは、三木さんの図書カードで買うことができたという。
「元気な限り続けていく」
時折、三木さんの元には児童・生徒から「寄付してくれてありがとう」といったお礼の手紙や電話が届く。こうした謝意を受けるたび、「やってて良かったと感じる」と話す三木さん。「私が少し節約すれば、これぐらいの図書カードは大丈夫。今後も体が元気な限り、続けていく」と柔和な笑みを浮かべつつ、抱負を語っている。