トラック荷台は畳敷き 牛に気配り往復約4800キロ 宝勝物流
第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会(和牛全共、6~10日)で、生体のまま審査を受けた種牛の部の出品牛が、13日に十勝に到着し、それぞれの牧場に戻った。運転手や随行者は牛の体調に気を配りながら鹿児島までの往復約4800キロを運搬し、十勝勢は好成績を残した。出発から16日間の長旅を終え、無事に生産者の下に返した関係者は安心した表情を浮かべた。
輸送を担当したのは、管内を中心に牛の運搬を約50年手掛ける宝勝物流(芽室町、今城三男社長)。和牛全共の運搬も約30年前から担っていて、今回は家畜専用の10トントラック3台で往復した。
当初、今城社長は鹿児島大会の輸送には消極的だった。開催地の南九州まではフェリーと陸路で片道4日間かかる長距離移動。5年に1度の大会に出品者が手塩に掛け、審査を控える牛を、万全な状態で運ぶ重圧があったという。
今回トラックには、牛の負担が減るように荷台に特別仕様で古畳を敷き、カメラを設置して運転席のモニターで把握できるようにした。運転した出口憲昭さん(57)は「特別な牛なので緊張感があった。揺れは疲れにつながるのでスピードとブレーキ、カーブには気を付けた」と振り返った。
トラックに随行して出品団事務局の北海道酪農畜産協会の職員ら約10人が、牧草などを積んで運んだ。2時間おきにサービスエリアに停車して牛の体調をチェック。関係者の努力の甲斐あって、本番では十勝勢は過去最高の成績を残した。出品者からは「いいコンディションで運んでくれた」と感謝の声が聞かれた。
トラックは13日午前に音更町内に到着。9月28日の出発から16日間随行した元JA職員で豊頃町の自営業太田誠二さん(42)は「大会が終わって周りは感動していても、自分たちは無事に牛を返すまでが仕事。体調を崩すことなく戻せて一安心」と語った。
今城社長も「期間中は牛が夢に出てきてよく眠れなかった。牛は長旅の疲れがなさそうでよかった」と話していた。(安田義教)