農に向き合う~農業経営部会会員紹介「音更・とかち河田ファーム」
1.法人化で規模拡大、有機に着手
入植4代目、音更町、士幌町、清水町、鹿追町に分散する、計106ヘクタールの畑で農業を営む。ニンジン、ジャガイモ、ゴボウ、小麦などを生産。2019年にキヌアの生産を始め、今年からは6ヘクタールの畑で新たに有機大豆の生産を始めた。
1927年、曽祖父らが岐阜から士幌町に入植し、酪農を始めた。79年に畑作に転換し、後に音更町へ拠点を変えた。河田利則代表(46)は勤めていた大手電子部品メーカーを辞め2013年に就農した。翌年に法人化し、父親の時代には20ヘクタール程度だった畑を年々拡大させている。現在は社員20人、アルバイト33人(2021年9月時点)で畑を営なむ。
2.健康需要に応えたい
「他の農家があまり手がけていないところに注目した」と言い、果実のような香りが特徴の甘いニンジン「アロマレッド」や、健康食品として注目されるも国内ではほとんど生産されていないキヌアの生産に取り組む。健康食品への関心が高く、健康志向の顧客のニーズに応えるため、農薬や化学肥料の使用量を減らした特別栽培野菜の生産に取り組んでいる。20年にはグローバルGAP認証を取得した。
独自のルートで販売までを手がけ、生産物の多くは道外のスーパーに陳列される。通信販売も他社に先駆け2014年から開始した。現在は通販専属の職員を1人配置して全国からのニーズに対応している。レビューにより消費者からの意見を直接知れるのが通信販売の良さだと言う。
法人化してからは「人を大事に」を掲げ、社員の処遇改善に努める。GPSの導入や作業マニュアルの作成によって、誰もが同じレベルで作業できるよう業務改善を図り、休みが取りやすい環境を整えた。社員とのコミュニケーションも密にし、30代が多くを占める若い会社であるものの、離職者は少ないと言う。大規模保管庫を用いて冬期の作物保管を可能にしており、年間を通した雇用創出に努める。
3.「普通じゃない」に刺激受け
同友会には学びと人脈形成のために参加。経営やマーケティング、人材活用といった面で自社の経営に役立てたい考えだ。社員教育としてのセミナー活用なども検討している。
就農前から経営には興味があり、国内の大学を卒業後はアメリカの大学に留学して経営工学を学んだ。同友会の農業経営部会への参加は、会を通して知り合う経営者らから刺激を受ける機会となっている。「ちょっと普通じゃないことをやってる人は気になる」と言い、自然栽培や加工品などに力を入れる他の農場に注目する。
4.目指すはキヌアのトップシェアと大規模有機農業
今後も健康需要に応える作物の生産に注力する。現在20トンほど生産するキヌアを数年後には200トンまで増やし、国内トップのシェアを目指す。また、今年から始めた有機大豆を筆頭に有機農業を拡大していき「大規模有機農業のロールモデルになる」ことを目標とする。
「低価格でよい商品を提供できるように」と、今後も規模拡大に努めるが「今いる人を大事にしたい」と言い、拡大するからには利益を出し、社員に還元するということを念頭に置く。「スタッフが幸せに働ける農業法人を目指したい」と力を込めた。
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