米寿と還暦の親子二人三脚で理容店 帯広のヘアーサロンワタナベ
帯広市内の理容店「ヘアーサロン ワタナベ」(東3南10)で、88歳の渡辺豊夫さんが今でも現役で仕事を続けている。店の代表は2代目の長男健治さん(61)に譲ったが、親子2人で来客に対応。今年度の道の生活衛生関係営業優良施設にも選ばれ、2人は「真面目にコツコツと取り組んできたことが評価されたんだと思う」と話している。
生活衛生-は、衛生管理状況が良好な旅館・ホテルや公衆浴場、興行場、理容所、美容所、クリーニング所などが対象。十勝からは今年度、同店のみが選ばれた。同店を推薦した道理容生活衛生同業組合帯広支部(坂上信喜支部長)は「他の理容所の模範となっている」と評価している。
同店は1958年、豊夫さんが開業。今年9月で丸64年を迎える。店は渡辺さん親子と健治さんの妻聡子さん(57)の3人で営む。
豊夫さんは1934年鹿追町出身。中学を卒業後、上士幌町で6年ほど修業した。札幌市や帯広市などでの約4年の職人時代を含めると、理容師のキャリアは70年近くに。「客商売だから人に好かれないとだめ。そして努力しないとお客さんはついてこない」と力説する。
動きは以前と比べて遅くなったが、散髪や洗髪など一連の作業をこなす。常連は80~90代の同年代も多く、「お客さんと話して、髪を切ること自体が健康の秘訣(ひけつ)かもしれないね」と笑う。
健治さんは札幌での修業を経て、25歳で同店に戻り、親子二人三脚は35年以上となった。コロナ禍当初は高齢のなじみ客が来るのを控えるなど、売り上げに影響が出たが、衛生管理をさらに徹底。椅子やドアノブをアルコール消毒するなど感染防止に気を配り、客足も戻った。
豊夫さんは5月17日に米寿を迎えたばかり。健治さんも還暦の節目を過ぎた。2人は「たくさんのいいお客さんに恵まれた」と声をそろえる。
健治さんは「父が長年続けているので、私も体が続く限り頑張りたい」と話し、豊夫さんは「いつ体が動かなくなるかはわからん。でも陸別など遠方から来る常連さんもいる。まだやるかな」とマイペースで働き続ける。
営業時間は午前9時~午後6時半。火曜、第3月曜定休。問い合わせは同店(0155・23・4958)へ。(松村智裕)