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君乃湯温泉、3月末で閉業 54年の歴史に幕

54年の歴史に幕を下ろす君乃湯温泉

 帯広市内の君乃湯温泉(西5南32、佐藤ツセさん経営)は3月末で営業を終え、54年の歴史に幕を閉じる。佐藤さん(92)は夫の君夫さん(故人)亡き後も息子と孫の3世代で湯を守ってきたが、コロナ禍による客数減や施設の老朽化にあらがえなかった。佐藤さんは「人生の半分以上を温泉・風呂に費やしてきた。やり残したことはない」と語り、残る日々も静かに客を待つ。

 同所で農家を営んでいた佐藤家。君夫さんがけがで農業を続けられなくなったのを機に、1967年、夫婦2人で沸かし湯の風呂屋を始めた。店名は、君夫さんの名にちなんだ。84年に温泉としての営業をスタート。91年にリニューアルして、寝湯や泡風呂などのほか、乾式サウナ付きになった。

君夫さん亡き後、3世代で切り盛りしてきた(左から)設夫さん、佐藤さん、宗平さん

 2000年に君夫さんが死去。その後は息子の設夫さん(68)や孫の宗平さん(32)、昔ながらのスタッフたちが佐藤さんを支えた。清掃や3時間かかる湯張りのため、午前5時ごろからスタッフが準備に入る。休みは月1回で、それ以外は新年の1月1~2日しかない。

 しかし、コロナ禍で温泉の利用は例年に比べて1割減が続いており、設備更新などの費用もかさむことから廃業を決めた。昨春から考え始め、今月から貼り紙で利用者に伝えている。

 天窓から光が差し込むと、茶褐色の湯が黄金色にも表情を変えるという君乃湯温泉。もう、開業当時を知る客もほとんどいなくなった。仏壇に向かい、「もうこれだけしたんだから、やめようと(君夫さんに)伝えた。ゆっくりすることにします」と佐藤さん。設夫さんも「これからはもう毎日休み。コロナがなければ、ゆっくり温泉旅行に行きたかったんだけどね」としみじみと話す。

 3月15日の定休以外は休まず、同月末まで営業するという。営業時間は午前11時~午後11時。(本田龍之介)

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