十勝沖でメタンハイドレート採取に成功 次世代エネルギー資源 太平洋側で国内初 北見工大
北見工業大学は24日、十勝沖で次世代エネルギー資源「メタンハイドレート(MH)」の採取に成功したと発表した。海底付近に存在する「表層型」で、国内太平洋側での採取は初めて。十勝沖では同大が2014年の調査でメタンの噴き出しを発見し、存在の可能性が高いとされていた。調査を担当した同大の山下聡教授は「実際に採取できたのは大きい。採取物の分析を行うことで、十勝沖での生成メカニズムの解明が格段に進むことが期待できる」としている。
同大環境・エネルギー研究推進センターが11月3~8日に十勝沖で調査した。MHは海底の地層内などに埋蔵される天然ガスの一種で、次世代エネルギーとして注目されている。
同大は14年に十勝沖約80キロの海底で巨大なメタン(天然ガスの主成分)の噴き出しなどを確認し、「メタンハイドレートがある可能性が非常に高い」としていた。17年から同海域で調査を続けていた。
採取に成功したのは水深935メートルの海底で、長さ3~4メートルの採泥管で堆積物を採取する「重力式コアラー」によるサンプリング調査を行った。最も浅くて深さ約50センチの海底で、厚さ25センチほどの白いMHの塊を確認した。分析した結果、結晶に含まれるガスの99%がメタン生成菌で作られたことが分かった。
山下教授は「堆積物の隙間に板状または点在することが多いが、塊は非常に珍しい。一帯に帯状に分布し、広範囲に広がっている可能性がある。どれだけ分布するかは精密な調査が必要」と話している。
十勝圏活性化推進期成会(会長・高橋正夫十勝町村会長)は国に対し、十勝港(広尾町)を拠点としたMHの資源調査や開発計画の促進を毎年要望。広尾町単独でも15年に経済産業省へ要望している。
広尾町の村瀬優町長は「十勝沖でMHが採取されたことは喜ばしいニュース。未来のエネルギーとして、十勝港を拠点とした新産業の創出につながれば」と期待を寄せている。
(デジタル編集部・小林祐己、松村智裕)
メタンと水が結合したシャーベット状の物質で「燃える氷」とも呼ばれる。日本近海には国内で使用する天然ガス100年分の資源の埋蔵が推定されている。経済産業省が調査を進め、深い海底に位置する「深層型」の資源量や採取技術の研究が進んでいる。「表層型」は資源量調査や採取方法の技術開発中。北見工大は2011年から北海道周辺海域で海底表層の調査を行い、オホーツク海の網走沖で採取に成功している。