第1弾は「ダチョウ」 飼育施設拡張に支援を 帯畜大がCF開始
帯広畜産大学(奥田潔学長)は、クラウドファンディング(CF)サービスを提供する「READYFOR(レディーフォー)」と業務提携し、27日からCFプロジェクトを始める。教育や研究の活性化を目的に、ネット上で主体的に寄付金を獲得する。第1弾のCFはダチョウサークルで、ダチョウの繁殖を促すため、飼育施設の拡張資金を募る。
国立大学への国の運営費交付金は年々削減され、研究者間の競争的研究資金獲得も激化している。そこで、研究資金や学生の活動資金を確保するため、自由度の高いCFの活用を決めた。同様の動きは、全国の大学に広がっている。
CF第1弾のダチョウサークル(森田季恵部長)は、大学構内にあるダチョウを放牧するパドックの拡張を計画。現在は70平方メートル(35平方メートル×2カ所)だが、新たに136・5平方メートルを増設して約3倍の広さにし、走り回れる飼育環境を整備する。高さ約3メートルの鉄パイプを設置し、周囲をネットで覆う。目標金額は119万円で、期間は27日~8月23日。目標に届かなければ、寄付金は全額返金される。
同大のダチョウ飼育は2002年、三好俊三名誉教授(故人)が研究目的で開始。最盛期は20頭以上いたが、三好氏が08年に退官すると繁殖技術がうまく伝わらず、施設縮小もあり、飼育数は1頭にまで減少した。現在は、タイショー(雄、5歳前後)と、昨年購入したサイロ(雌、4歳前後)の2頭がいる。
ダチョウの数が減少した原因について同サークルは、施設縮小で走り回れるスペースがなくなり、産卵しやすい施設環境ではなくなったと認識する。走る雌を雄が追い掛けて求愛行動するが、現在のパドックや飼育室(73平方メートル)は狭く、体長2メートルを超えるダチョウは走ることができない。ストレスを感じるためか、ここ数年、同大内での交尾による産卵は確認されていない。
2年前にも施設拡張を計画したが、高額の工事費が捻出できず断念した。今回、大学がCF活用を決めたことから、名乗りを上げた。寄付者へのリターンは、巨大なダチョウの羽や卵を使ったストラップやエッグアート、ジャンパーなどを用意する予定。
家畜としての有用性を発信するのがサークルの目的だが、「現在は学内で繁殖できず、家畜とは言えない状態」と森田部長。魅力を伝えるには基礎となる繁殖が重要とし、「頭数が増えれば食肉生産の可能性が広がる。卵や羽、皮などの副産物も得られ、家畜としての価値を伝えられる」と期待する。
国内大学で唯一のダチョウサークルと自負する川翔真副部長は「ダチョウは牛よりも栄養価が高く、餌代が掛からない。食料危機で農業が注目される中、畜産の主役になり得る」とし、協力を呼び掛けている。(池谷智仁)