後絶たぬ帯広市の不祥事 組織の歯止め効かず
昨年度処分過去最多に 「感覚鈍い」指摘も
帯広市は不適正事務の再発防止に向け、抜本的な業務改善策を全庁的に協議している。今月中にも対策をまとめようとしていた最中に、またしても事務処理ミスが発覚、101人に対して特別児童扶養手当の支給が1カ月遅れる事態となった。近年の市関連の不祥事やミスを振り返ると、職員個人の資質的要因にとどまらず、組織として問題があることは明らか。そこを直視した対策が求められる。
同手当の支給遅延の直接的な原因は、担当者が事務処理期限に遅れても問題ないと思い込んでいたためだった。市議の1人は「締め切りを守らなくても大丈夫と考えるなんて、普通は想定しないだろう」とし、上司らの心境をおもんぱかる。しかし、市では過去に、約800件もの児童手当の申請書類を担当職員が放置したために支給が遅れた例もあり、「想定外」は言い訳にならない。
今回のケースでは受給者からの届け出が8~9月に集中し、担当者の事務量が一時的に増すため、上司は声掛けをしていたという。そこでなぜ業務の遅滞に気付けなかったのか。
5月にあった生活保護費の過大支給問題でも、担当者は不適正事務に気付いていながら周囲に相談できなかった。市幹部の1人は「チェック体制を整えることも大切だが、もっとも重要なのはコミュニケーション。『(仕事が)大分たまっています』などと気軽に言える雰囲気作りが必要だ」と話す。
市職員の昨年度の処分件数は35件で、処分基準が改定された2007年度以降では最多。懲戒処分も2番目に多い14人に上った。今回の事案も処分対象になるが、処分を決める委員会の開催時期は未定。「一定程度件数が重なった段階で(委員会を)開く」とする市の姿勢に、別の市議は「ミスや不祥事はルーチンなのか」とあきれる。
市は「処分の大部分は交通事故や交通違反によるもの」とするが、事件に発展する重大な不祥事が目に付くのも事実。重大事案ほど個人の資質に原因を求めがちだが、果たしてそれだけなのか検証が必要だ。
8月に強制わいせつ容疑で逮捕された小学校教諭の場合、児童と過度なスキンシップを取っていることを管理職や市教委が把握していたにもかかわらず、事件を防げなかった。昨年のばんえい競馬での厩舎関係者による競馬法違反事件でも、市側は違法は馬券購入のうわさを以前から把握していながら、徹底的な調査はなされなかった。
前出の市議は「性善説なのか、ことなかれ主義なのか知らないが、市は不祥事の芽を摘もうという感覚が鈍い」とし、小さなミスの積み重ねが次の重大な事案につながることを危ぶんでいる。(丹羽恭太)