自然「並ぶ稜線その名も『オッパイ山』」 まちマイ上士幌編
町内の十勝三股から見えるビリベツ岳と西クマネシリ岳。柔らかな稜線とツンととがった山頂が乳房のように見えることから、「オッパイ山」と呼ばれる。
また、アイヌ民族の人たちにとって、「聖地」とされている。「私は、アイヌ民族の一大聖地を見たのです」-。1980年5月、アイヌ民族復権運動の父とされる故山本多助氏(釧路)は、初めて見た感動を自著の「オッパイ山」(上士幌町発行、82年)にこう記している。
山本氏は、この山々をアイヌ民族の口承叙事詩「ユーカラ」の天地創造物語に登場する、神が人間(アイヌ)を創造するときに、大地に土をこねて大きな乳房の模型を造った場面そのものだとした。以後、「アイヌ民族発祥の地」として、上士幌ウタリ文化伝承保存会が毎年7月、「オッパイ山祭り」を行っている。
十勝三股で行われた1回目の祭りは、雨が降っていた。同保存会の野村辰博会長(75)=上士幌=によると、祭司を務めた山本エカシ(長老)が晴れ乞いをすると、そこだけぽっかりと晴れたという。「素朴でもいい。これからも脈々とアイヌ文化を引き継いでいきたい」という。今年も31回目の祭りが、町上音更の「東泉園」(アイヌ植物園)で開かれた。(酒井花)
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