日勝研究に意欲 神田日勝記念美術館の新学芸員川岸さん
【鹿追】神田日勝記念美術館(菅訓章館長)の新学芸員として川岸真由子さん(27)が就任した。「日勝は命を燃やして作品を残した画家。日本の美術史における日勝の位置付けを確立させたい」と意欲を見せている。
川岸さんは、石川県出身。北大大学院で芸術学を専攻し、専門は19世紀後半から20世紀にかけた西洋美術史。日本の美術の影響を受けた欧州のジャポニスムの巨匠ホイッスラーやシーュルレアリスムを代表するルネ・マグリットなどを研究してきた。また、大学院生のときに2年間休学し、金沢21世紀美術館で臨時学芸員を務め、美術館の教育普及事業についても学んだ。
大学院を修了するに当たり、日勝記念美術館で学芸員を募集していることを知り、「自分が学んできた作家との接点はなかった」と言うものの、「32歳という若さで亡くなり、残した作品からは命懸けで描いた思いが伝わってくる」と強い関心を寄せ、応募した。
今回、学芸員として採用され、初めて十勝を訪れた。同館所蔵の日勝の作品を目の当たりにし、「暗い作品の中にも密度や圧力を感じる」と素直な感想を述べながらも、「馬(絶筆)」については、「冷害という農家にとっては厳しい脅威にさらされながらも、作物の種を一つずつ埋めていこうとするように、絵の具を丁寧に置いている感じ。日勝の生き方と作品がダブっているようだ」と印象を語る。
美術館友の会(武田耕次会長)の会員からは「なぜに日勝の作品が人の心を打つのかを知りたい」と学術的な研究の深まりを期待されている。菅館長も川岸さんに対し「日勝と直接交流した人も高齢化してきている。手紙なども分析し、日勝に専門的な光を当ててほしい」と求める。
2020年は日勝没後50年に当たる。川岸さんは「日勝の歴史的価値をしっかりと発信できるようにしたい」と表情を引き締めた。(大野篤志)
◆神田日勝記念美術館について
・KANDA NISSHO-公式ホームページ