洋服姿撮影で生き生きと ふるさとの家の和田さん
社会福祉法人ふるさと(帯広)が運営する認知症対応型通所介護施設「ふるさとの家」で、若い頃からおしゃれに関心があった利用者の和田悦子さん(77)=市内在住=の洋服姿をスタッフがカメラで撮り続け、和田さん自身もおしゃれの楽しみを取り戻し、生き生きとした表情を見せるようになった。写真を全てノートにスクラップした和田さんは「(私服を)褒めてもらってうれしかった。毎日のようにノートを見ています」と満面に笑みを浮かべている。
同施設(白樺16条東5)では体力の低下や認知症の進行を予防するため、利用者に応じた取り組みを実践している。洋服姿の撮影は、おしゃれな服を着ている和田さんを見た遠藤まゆみ主任が思い付いた。
和田さんは市内の中学校を卒業後、菓子製造の家業を手伝い、夜は喫茶店でウエートレスを務めた。「学生の頃は『卒業したら、いい物を買っておしゃれをしたい』と思っていた。着る物欲しさに働いていた」と振り返る。結婚後もブティックで買い物をするのが楽しみで、今でも「テレビを見ていても、出ている人の着ている物に目がいく」という。2013年1月から同施設に通っている。
写真撮影が始まったのは昨年夏から。撮られることで、和田さんのおしゃれ心に火が付いた。施設に行く前日には「これとこれを着ていこうと考えるのが楽しかった。靴下も合わせたりね」と笑顔を見せる。
もともと新聞記事などのスクラップが好きだった和田さんは、スタッフが紙にプリントした写真を自宅に持ち帰り、切ってノートに貼った。4冊になったノートにはカシミヤのセーターやパンツスーツ、ロングコートなどに身を包み、さまざまな表情を見せる和田さんが写っている。中には40代の頃にオーダーメードしたペイズリー柄のブラウスなど、何十年ぶりかで袖を通した服も。傘や椅子を使ってモデルのようにポーズを決めた写真もある。
「通い始めの頃は元気がなかったが、いい笑顔を見せてくれるようになった。(取り組みは)大成功だと思います」と遠藤さん。写真撮影は1月でいったん終えたが、夏からは第2弾も予定している。
帯広大谷短大社会福祉科の佐藤千恵准教授は「(和田さんの)これまでの暮らしを尊重し、きちんと理解しているからできたことだと思う。高齢者が増える中、個々に応じた支援や関わりはより求められてくる」と話している。(澤村真理子)