福島に遠征、現地で野球交流 江陵高野球部
【幕別】江陵高校野球部(渋谷拓巳主将、17人)は、1週間にわたる初の福島県への遠征から戻った。野球交流だけではなく、東日本大震災で被害に遭った現場を見たほか、ごみ拾いも行った。谷本献悟監督は「復興はまだまだという印象。被災地を実際に見たことで野球技術だけではなく、人間的にも成長できたのではないか」と話している。
谷本監督が強豪の日大東北高(福島県郡山市)の監督と親交があることから、学生寮を宿泊先として提供してもらった。同高などと練習試合を行うに当たり、「初めて訪問する被災地で何かできないか」と見学とボランティアを計画した。
3月22日に部員17人、引率2人で学校を出発。フェリーで翌日宮城県仙台市に到着、バスで同県女川町周辺を見て回った。特に津波で崩壊した遺構「江島共済会館」前ではバスを降り、全員で黙とうをささげた。渋谷主将は「亡くなった人を思うと苦しい気持ちだった。震災被害はまだ続いていることを実感させられた」と振り返る。
その後、福島県郡山市に移動、阿武隈川河川敷でごみ拾いを行った。昨年2月から登校中にごみ拾いを続ける同部員たちは1時間ほど周り、大袋5個分のごみを集めた。
遠征中も震災の爪痕の大きさを感じることが幾度もあったという。所々掘り返された痕が残っていた日大東北のグラウンドは除染が終わったばかりだった。西田つばさ部長(25)は「福島・双葉町出身の、ある交流高監督の『実家にはもう戻れない』との言葉に絶句した」と説明する。
5校と行った交流試合は全敗だったが、同29日に戻った谷本監督は「すべての部分で自分たちの甘さを実感したが、部員は何か感じてくれたと思う」とする。佐藤龍馬副主将は「被災で野球をしたくてもできない人、亡くなった人もいる。自分の置かれた立場は幸せだと改めて実感した。今後の試合を全力でプレーしたい」と、決意していた。(佐藤いづみ)