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ブラック企業 十勝も… 帯広労基署へ相談年間2000件超

労働基準法など労働法令に違反がないか目を光らせる徳本課長。帯広労基署では相談を受け付けている

残業代一定額で頭打ち/タイムカード改ざん
 全国的に社会問題となっている「ブラック企業」。十勝でも実は労働基準法違反を疑われるケースはある。北海道労働局が先月発表した若者の「使い捨て」が疑われる企業などへの監督指導は全道197事業所に行い、うち約8割の事業所に労働法令違反があった。十勝でも長時間労働やサービス残業などで帯広労基署が事業所に立ち入り調査をしている事例もある。労使ともに正しい法知識を得ることが求められ、労働者のモチベーションが上がれば、会社の経営改善にもなる。

 「きちんとした数字、詳しい情報があれば、改善される可能性が高い。悪質事案は書類送検します」。帯広労働基準監督署の徳本勝則監督課長は事業所に立ち入り、改善させてきた自信を見せる。

 帯広労基署が受ける相談件数は2010年以降、毎年2000件を超えるようになった。このうち労働基準法104条に基づく申告となるのが年100件程度。帯広管轄の事例は、解雇(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準)、賃金支払い、残業代(割り増し賃金)の3つの問題が多い。

適切な待遇 業績改善に
 解雇は少なくとも30日前までに予告、そうでない場合は解雇予告手当てを支払わなければならない。賃金支払いは、支払われるべき給料が通貨で、全額を月1回以上一定の期日に直接労働者に支払う必要がある。割り増し賃金に関しては、時間外労働、深夜労働(午後10時~午前5時)には25%以上の割り増し賃金、法定休日労働には35%以上の割り増しが必要だ。

 帯広労基署が確認したこれまでの事例では、タイムカードを改ざんするなど管理が不適切な企業、残業代を全く支払わない、残業時間に関わらず一定額しか支払わないという企業。労基法の範囲を超えるパワハラや仕事ができない理由で殴る事例もあった。徳本課長は「第三者や家族からの話も来るが、本人から詳しい内容を直接教えてもらうことが大事だ」とする。

 十勝特有の長時間労働は、農繁期にはパートの人でも月100時間超の時間外・休日労働も。同署では、100時間超は労働者からの申し出となるが、医師による面接指導を受け、お墨付きをもらってから働くよう求めている。

 事業所が違法に労働者を働かせていないか、立ち入り調査をするのが監督官。同署には6人所属し、4人が実働部隊で管内企業を担当する。

 労働基準法に違反してまで利益を出そうとする企業もある中、経営者や総務担当に憎まれるような業務を行うが、同署の徳本課長の経験では、企業を訪れ、適切に賃金を払うように改善した企業は、従業員のやる気が出てお客へのサービス精神が旺盛になり、結果として会社の業績も良くなっている。徳本課長は「負のスパイラルに陥る企業より、働く人がやる気になる『ホワイト企業』にすることが会社にとっても良い」と強調する。

   ◆

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「使い捨て」企業 77%で法令違反
 道労働局は昨年9月、若者の「使い捨て」が疑われる企業に対する取り組み強化の一環で、労災や相談を基にして、違反が疑われる道内197事業所を対象に監督指導を行った。業種は多い順に製造業53事業所、商業38事業所、保健衛生業29事業所。従業員規模は10~29人が68事業所(35%)、1~9人が66事業所(34%)で少人数が半数以上を占めるが、100人以上の規模も15事業所(7%)あった。

 法令違反は77%に当たる151事業所で認められた。違反の内容は(1)法定労働時間(87事業所)(2)時間外労働等の割増賃金(53事業所)(3)労働条件の明示(33事業所)が目立った。道労働局監督課は「長時間労働や賃金不払いに関する相談は毎年多く受けている。引き続き監督指導を強化し、重大悪質な事案に対しては司法処分も含め厳正に対処する」としている。(関坂典生)

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山口耕司弁護士

勤務時間の記録を
山口耕司弁護士(帯広市)の話

 まずはブラック企業に入らないことだ。可能であれば就職四季報、先輩の話などから情報を集める。残業代を固定していたり、年俸制など雇用や賃金体系が怪しい企業はブラック企業の可能性もある。労組の有無も調べると、労働者に権利を与えているかどうか分かる。

 ブラック企業で勤務中の場合は、勤務時間の記録を取って置くこと。日記でも良いのでエクセルに残すよりも書き換えがしにくい物は、裁判でも信用性が高まる。労働に関する法知識を得ることも大事。ワークルール検定(NPO法人職場の権利教育ネットワーク主催)がある。「仕事は苦しいがこんなものか」と納得させられるのか、本当に法に反しているのか分かる。

 ブラック企業は全国の大企業が注目されがちだが、潜在的には地方の中小企業にもある。組織を改善するのは難しい。心身を患うくらいなら転職するのも必要だ。

<ブラック企業(会社)>
 厚生労働省では言葉を定義していないが、労働法令に抵触またはその可能性がある条件で若者を使い捨てにするような企業や官公庁、団体。一般的には従業員に過酷な長時間労働やサービス残業、パワーハラスメントなどを繰り返す場合も指す。2008年に書籍「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」が発刊、12年に有識者など有志による「ブラック企業大賞」が創設され、13年のユーキャン新語・流行語大賞にも入り、社会問題となっている。

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