種豚群のレベルアップを目指した繁殖能力改良と近交度上昇抑制手法
道総研畜産試験場 畜産研究部 中小家畜グループ
1.試験のねらい
系統豚維持群における繁殖能力の改良と近交度上昇抑制をねらいとした二つの手法の有効性について、ハマナスW2(以下、W2)維持群を用いて実証する。
2.試験の方法
1)民間種豚場で飼養している系統豚維持群の後継個体生産の際に育種価を用いた選抜を行い、繁殖形質の遺伝的能力および近交係数の推移について調査する。
2)2農場(民間種豚場・畜産試験場)で飼養されている系統豚維持群の群間血縁交流を実施し、近交係数および繁殖形質の遺伝的能力について調査する。
3.成果の概要
1)(1)民間種豚場で飼養されているW2維持群において総産子数育種価を用いて選抜した個体(158腹)の産子の総産子数期待育種価平均は従来選抜法と比較して0.15頭増加した。
(2)育種価選抜により生産された後継個体(261頭)を維持群に繰り入れた結果、集団の総産子数育種価分布が正の方向に変動し、選抜前集団と比較して平均値が0.16頭増加した。
(3)育種価選抜個体を繰り入れたW2維持群第5~6世代の総産子数育種価は第4世代以前と比較して大きな上昇幅(+0.12~0.20頭/世代)を示した一方、近交係数はほぼ同等の上昇幅を示した。
2)(1)民間種豚場および畜試で飼養されているW2維持群の血縁交流により、総産子数育種価は血縁交流前の世代と比較して向上した。また、近交係数の上昇幅は通常の世代更新時と比較して小さかった。
以上の結果から、系統豚維持群における育種価選抜の利用ならびに群間血縁交流は維持群の繁殖能力向上と近交度抑制に有効であり、系統豚の供用年数延長に寄与する手法であると考えられた。
4.留意点
・本成果は豚の育種改良を行う試験研究機関において、系統豚維持群等の改良手法として活用する。
<用語説明>
[系統豚]
生産能力について改良を加えられ、個体間で一定の血縁関係をもつ豚の集団。
[維持群]
系統豚の造成完了時の頭数規模および血縁関係を保つ集団。世代交代は集団内での交配により行う。ハマナスW2の維持群は民間種豚場(ホクレン滝川スワイン・ステーション)および畜産試験場の2農場で飼養しており、H20年の系統完成時からそれぞれ独立した世代更新を行っている。
詳しい内容については下記にお問い合わせください。
道総研畜産試験場 畜産研究部 中小家畜グループ 甲田洋子
電話 0156-64-0611 FAX 0156-64-6151
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