どうなる?北海道の農家戸数と多様な担い手への期待~農林業センサスを用いて将来予測を実施~
道総研 中央農業試験場 農業システム部 農業システムグループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ
道総研 酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ
1.背景と目的
道総研では、農林業センサスの公表に合わせて、将来的な農家戸数等の動向予測を実施してきた。最新の2020年農林業センサスが公表されたことから、これを用いて、将来的な個人経営体数等の動向予測を行う。また、組織経営体が所有する経営耕地面積等の動向解析を行うことで、農業生産基盤の維持効果を明らかにする。
2.試験の方法
2020年農林業センサスを用いた農家人口の推計に基づき、将来的な個人経営体数(一戸一法人は含まない)の動向を予測するとともに、経営耕地面積等の推計により、将来的な経営規模の動向を予測する。また、北海道における組織経営体と販売農家(一戸一法人を含む)が所有する経営耕地面積を比較することで、組織経営体が農業生産基盤の維持に貢献したことを確認する。
3.成果の概要
1)個人経営体数は、2020年で3.0万経営体であり、2035年に1.8万経営体(2020年比59%)に減少すると予測された(表1)。個人経営体の減少率は、日高、渡島、上川、留萌、釧路、空知の順に大きかった。
2)個人経営体の世帯員数は、2020年で10.9万人であり、2035年に5.7万人(2020年比52%)に減少すると予測された(表1)。また、個人経営体の世帯員数に占める高齢者比率(65歳以上)は、2020年で36.9%だが、2035年に35.7%(2020年比:97%)に減少すると予測された。
3)個人経営体の経営耕地面積は、2020年で75万haであり、個人経営体の経営耕地面積が過去10年間と同程度で減少することを想定すると、2035年には59万ha(2020年比79%)になると予測された(データ略)。
4)予測された個人経営体の経営耕地面積を維持するために必要となる1経営体当たり平均経営耕地面積は、2035年には32.9ha/経営体(2020年比133%)になると予測された(表2)。水田作地帯では20~30ha/経営体、畑作地帯では40~50ha/経営体、酪農地帯では約90ha/経営体まで拡大すると予測された。
5)経営体当たりの平均田面積および平均乳牛飼養頭数は、2035年には13.4ha(2020年比120%)、116頭(2020年比108%)になると予測された(表2、平均乳牛飼養頭数はデータ略)。
6)北海道における組織経営体と販売農家による経営耕地面積は、2005年から2020年で107.2万haから102.8万ha(-4.1%)に減少した(表3)。販売農家の経営耕地面積は、同期間に12.8万ha減少したが、組織経営体の経営耕地面積は8.4万ha拡大したことから、両者を合わせた農業経営体の経営耕地面積の減少は4.4万haにとどまる。また、組織経営体の経営耕地面積が占める割合は、9.9%から18.5%へと高まっている。このように、組織経営体は、農地の受け手として重要な役割を果たしていることから、地域の営農実態に応じて設立、育成を図る必要がある。
4.留意点
1)本成果は、行政機関が農業施策や技術開発目標を検討する際に活用する。
2)本成果の動向予測は、2020年農林業センサスの個人経営体(一戸一法人は含まない)に関して推計したものである。団体経営体の経営体数や団体経営体が担う経営耕地面積、乳牛飼養頭数は推計に含まれない。
【用語解説(経営体に関する詳細は、農林業センサス(各年版)を参照のこと)】
・農業経営体:世帯や法人格の有無にかかわらず、事業(農業生産、農作業の受託等)を行う者。
・個人経営体:個人(世帯)で事業(同上)を行う経営体をいう。法人化して事業を行う経営体は含まない。
・団体経営体:個人経営体以外の経営体をいう。一戸一法人及び組織経営体を含む。
・組織経営体:世帯で事業(同上)を行わない者(家族経営体でない経営体)をいう。
・販売農家:家族(1世帯)による経営体(経営耕地面積30a以上または農産物販売金額50万円以上)で、組織経営体を含まない。
・コーホート分析:同じ年齢階層に属している人口(コーホート)に移動確率を乗じることで、次期の人口を予測する分析手法
・実績値:農林業センサスで公表された値・予測値:農林業センサスを用いた動向予測結果の値
・実績補正値:予測に係る制約のため、動向予測から除外した市町村の値を除いた実績値
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研中央農業試験場 農業システムグループ
電話(0123)89-2001 E-mail:central-agri@hro.or.jp
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