ケイセイ100周年 自然と農業共生 次世代へ【先読み新年号】
佐野公彦会長(69)
高桑裕次社長(66)
◆造材と飼料販売に業務を集中
十勝造材業ナンバーワンの隆盛から、経営の厳しかった冬の時代を経て、ケイセイは森林や公園を守り、酪農と畜産を支える総合商社として発展を続ける。次の百年を見据えて、環境と地域に貢献する企業として着実に歩み始めている。
同社は、佐野恵策氏が1924(大正13)年、樺太の恵須取町で立ち上げた佐野造材部が発祥。終戦後、陸別町で造材業を起こし、物資難の時代に貴重な原料を供給した。
2代目の光男氏に経営がバトンタッチされると、会社は隆盛期を迎える。80年代に多角化を推し進め、売上高は100億円を突破。しかし、国産木材の需要減と多角化のマイナス面も影響し、業績は悪化。2001年から経営再建に取り組んだ。
資産の売却を進め、本業の造材業と飼料販売に集中し、この数年で経営は改善に転じている。主軸だった造材に代わり、飼料販売が売上高の8割を占める。牛用の配合飼料やビタミン剤、養豚用・養鶏用飼料のほか木製のカーフハッチ(子牛の飼育小屋)も受注制作する。
地域の人々と直接関わる部門として力を入れるのが、土木緑化事業。多数の帯広市民が参加して植林を行い造成された「帯広の森」。その中核施設「はぐくーむ」の指定管理者を10年から続ける。
◆道東の森整備 脱炭素に貢献
1世紀にわたり培った森づくりの技術を、自然観察、木工体験など多彩なプログラムを通じて市民に還元している。帯広市内北地区の公園管理も一環だ。
中標津事業所には、創業の基礎が今も残る。根釧地域の国有林や民有林での植樹、間伐、伐採を通して森林整備に当たる。チップ工場も新設して、丸太を製紙用や燃料用に加工する。「脱炭素社会の観点から2021年より経営に携わる高桑社長(左)は北洋銀行帯広中央支店長を経験し十勝の経済にも明るい。佐野会長(右)と共に経営基盤の強化を図る森づくりは見直されている。誇りを持って取り組んでいく」と、高桑裕次社長(66)。
創業家で代表権を持つ佐野公彦会長(69)は「自然と農業と共生する私たちは、『ESG(環境・社会・企業統治)経営』を志さなくてはいけない。地域社会とお客さまに評価されるよう成長と進化を追求したい」と話している。
■沿革■
1924年 佐野恵策氏が、樺太・恵須取町で「佐野造材部」を創業
46年 陸別町で山の伐採、流送を行う素材生産業を再開
54年 恵盛木材を設立し、本社を帯広市に置く
60年 佐野光男氏が社長就任
中標津町にチップ工場を新設
恵盛運輸を設立
73年 芽室町に粗飼料の工場を新設、総合畜産飼料取扱業者となる
82年 土木緑化部を開設
92年 ケイセイに社名変更
95年 佐野公彦氏が社長に就任
2002年 由佐壽朗氏が社長に就任
10年 帯広の森・はぐくーむの指定管理者となる
22年 高桑裕次氏が社長、佐野公彦氏が会長に就任
■概要■
本社 帯広市東5南7ノ1
資本金 4000万円
従業員 89人
年商 50億円