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畑作物に対する苦土質肥料「軽焼マグネシウム」の肥効評価

道総研 十勝農業試験場 研究部 生産環境グループ
道総研 北見農業試験場 研究部 生産環境グループ

1.試験のねらい
 苦土質肥料であるサルポマグおよび軽焼マグネシウムは共に価格動向が不安定で、その時々の入手の難易・価格状況に応じて双方の原料を柔軟に使用し肥料を安定供給できるよう体制を整える必要がある。
 そこで、特に知見の少ない軽焼マグネシウムの肥効を評価し、マグネシウムの溶出試験や畑作物への施用効果試験によってサルポマグとの違いを詳細に明らかにし、苦土質肥料原料の入手・調整と肥料の安定供給に資する基礎的知見を得ることを目的とした。

2.試験の方法
1)マグネシウム溶出試験
 ・ねらい: 軽焼マグネシウムとサルポマグのマグネシウム溶出特性を明らかにする。
 ・試験項目等: 供試溶液は図1凡例に示す。CEC 用のカラムを使用し30℃恒温条件で合計1500mL の溶液を100mL ごとの分画で溶出した。
2)軽焼マグネシウムの施用効果試験
 ・ねらい: 主要畑作物(春まき小麦、大豆、てんさい(直播)、ばれいしょ)に対する軽焼マグネシウムとサルポマグの施用効果を明らかにする。
 ・試験項目等: 供試圃場:十勝農試(淡色黒ボク土、交換性MgO は10~20mg/100g)・北見農試(普通多湿黒ボク土、交換性MgO は14~33mg/100g)、施肥量:施肥ガイドに準じて設定、MgO は0、4、6kg/10a。処理区:無施用区、サルポ区、軽焼区。参考区として併用区等。a-b間には有意差がある。

3.試験の結果
1 )水溶性マグネシウムを18.5%含むサルポマグからは速やかにマグネシウムが溶出したのに対し、ク溶性マグネシウムを65~80%含む軽焼マグネシウムはマグネシウムの溶解性が大きく劣り、水にはほとんど溶けず、溶解のためには酸が必要であるため、実際の圃場でのマグネシウムの肥効は緩効的となることが推察された(図1)。
2 )春まき小麦については、MgO 吸収量を含めた処理間の有意差は認められず、収量指数の差も1~2%と小さかったことから、軽焼マグネシウムの肥効はサルポマグと同程度と判断された。
3 )大豆については、生育途中においては軽焼区のマグネシウム吸収が遅れる場合があったものの、3カ年平均では生育・MgO 吸収量にも差はなく、収穫時では軽焼マグネシウムの肥効はサルポマグと同程度と判断された(表1)。
4 )てんさいについては、生育・収量・養分吸収について差はなく、サルポマグと軽焼マグネシウムの肥効は同程度と判断された(表2)。
5 )ばれいしょについては、生育途中においては軽焼区のマグネシウム吸収が遅れる場合があったものの、収穫時では軽焼マグネシウムの肥効はサルポマグと同程度と判断された。またサルポマグと軽焼マグネシウムを半分ずつとした併用区についても、効果はサルポ区および軽焼区と同程度と判断された(表3)。
6 )栽培跡地の土壌分析結果では交換性マグネシウムはサルポ区が軽焼区よりも有意に高い場合があり(データ略)、軽焼区の交換性マグネシウムは無施用区との差が小さかった(表1~3)。このことから、軽焼マグネシウム由来の残存マグネシウムは交換性マグネシウムに反映されにくいことが示唆された。これは、交換性マグネシウムの抽出はpH7の1M 酢酸アンモニウム溶液が用いられ酸抽出ではないことから、軽焼マグネシウム由来の残存マグネシウムは土壌粒子の負荷電ではなく、未溶出のまま軽焼マグネシウム本体内に残存すると考えられる。



詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場
電話(0155)62-2431  E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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