品種・前作・土壌窒素で決まるばれいしょの窒素施肥
十勝農業試験場 研究部 生産環境グループ
上川農業試験場 研究部 生産環境グループ
1.背景と目的
加工用ばれいしょの国内生産量において道産は8割以上を占めるが、近年加工メーカーは国内需要の高まりによって国内供給量が不足しており、国産品の増産と安定供給が求められている。
そこで、トヨシロを中心とした加工用ばれいしょ品種および生食用ばれいしょ品種数種類を供試し、基肥の増肥あるいは追肥の増収効果を検討し、規格内収量を向上させる最適窒素施肥量を算出する施肥技術の確立を目的とした。
2.試験方法
1)ばれいしょ品種の窒素施肥反応の解明
・ねらい:品種の施肥反応と基肥増肥や追肥の適用性を明らかにする。
・試験項目等: 供試品種:トヨシロ、スノーデン、きたひめ、リラチップ、キタアカリ、メークイン、男爵薯。供試圃場:十勝農試、上川農試。処理区:標準施肥区(N6kg/10a)、基肥増肥区(N9kg/10a)、追肥区(N6+3kg/10a培土期~開花盛期)、尿素葉面散布区。
2)増収を目指した加工用ばれいしょの土壌窒素診断と施肥対応の確立
・ねらい: 加工用ばれいしょの規格内収量(M-2L(60~260g)サイズ)を最大にする最適窒素吸収量を明らかにし、さらに熱水抽出性窒素に基づく土壌診断と施肥対応を確立する。
・試験項目等: 供試品種:同上、供試圃場:十勝農試、上川農試、帯広市、芽室町、音更町、足寄町、美瑛町、富良野市。処理区:窒素施肥量0~12kg/10a。前作物:緑肥(エンバク、とうもろこし)、小豆、大豆、ごぼう、飼料用とうもろこし、てんさい。
3.成果の概要
1 )トヨシロの場合、培土前~開花始の追肥は比較的効果があったが、基肥の増肥は追肥による増肥よりもより安定的な効果を示し、増収が期待できると考えられた(表1)。葉面散布にも増収効果が認められる場合はあったが、基肥の増肥より効果が不安定であった。
2 )スノーデンの場合は、基肥の増肥と追肥(開花始)はほぼ同程度の増収効果と考えられた(表1)。きたひめやキタアカリの場合は基肥増肥であっても増収効果は不安定であった。メークインや男爵薯の場合は基肥増肥や追肥、葉面散布のいずれも増収効果はなく、増肥を避けるべきと考えられた。
3 )基肥の窒素増肥(増肥量3~6kg/10a)によって、デンプン価はトヨシロでは平均15.6~16.1%が平均15.3~15.7%に低下、スノーデンでは平均14.5%が平均14.2%に低下したが、その低下程度はともに0.2~0.4%程度であった。
4 )ばれいしょの収穫期窒素吸収量と規格内収量(M~2L)は密接に相関し、窒素吸収量が10~11kg/10aで規格内収量が頭打ちとなることが示された(図1)。
5 )熱水抽出性窒素と無窒素区の窒素吸収量も有意な相関関係にあり、熱水抽出性窒素が約10mg/100gで窒素吸収量が頭打ちとなったが、前作物がてんさいの場合は窒素吸収量が高値であった(図2)。
6 )以上から、加工用ばれいしょの最適窒素吸収量(収穫期)を11kg/10aとし、熱水抽出性窒素から土壌由来の窒素吸収量を推定し、前作物を考慮した窒素施肥対応を表2のように整理した。
7 )本技術は、熱水抽出性窒素が11mg/100g以上や前作がてんさいの場合、その他の要因で窒素供給量が過大な場合には適合度が十分でなかったが、全体では75%の適合度が得られた。
4.成果の活用面と留意点
1)土壌診断に基づく窒素施肥対応は、トヨシロを主とした加工用ばれいしょ全般に適用する。
2 )窒素供給量が高レベルであることが予想される場合には、土壌由来の窒素供給量の正確な予測は難しいため本成績の適用には特に留意する必要がある。
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