イクラ「高値」の花 年末需要で品薄懸念 サケ不漁 卸値5割上昇
イクラが品薄となり、価格が高騰している。サケの不漁で供給不足となったのが主な要因で、帯広地方卸売市場の卸値は昨年に比べ5割ほど上昇、過去30年で最高水準となっている。12月から本格的な需要期となるが、近年の品薄傾向から在庫もほとんどなく、売れ行きによっては品切れの可能性も。帯広市内のスーパーやおせち業者、すし店などは、先が見通せない状況に頭を痛めている。
帯広地方卸売市場によると、同市場で扱うイクラは例年6、7トンだが、今年は3トンほどにまで減少。価格も1キロ5000円ほどだったのが、1万円台に上昇している。担当者は「勤務してきた30年間で記憶にない数字」と話す。今年は全国的にサケが取れず、市場に出回る生筋子も激減。近年続く品薄のため在庫はほとんどなく、各地で取り合いになったことも価格高騰に拍車を掛けた。
12月からは歳暮、おせち用としてイクラの需要が本格的に高まる。売り上げ低下も考えられるが、同市場では「半分売れれば昨年と同じ額。それぐらいはいくと思う」と予想。一方、在庫はほとんどないため「予想以上に売れれば、年内でなくなる可能性もある」とする。
スーパーのダイイチは11月時点での影響はあまりないとするが、例年、家庭で作るおせちなどで需要が増える12月の売り上げ低下を懸念。既にシーズンを終えたが、値上がりした生筋子は「相当(売り上げを)落とした」(担当者)といい、イクラについても「落ちると予想している」と厳しい見方を示す。今、店頭に置かれているのは加工の筋子が主。イクラは数自体が少なく、価格は昨年より3~4割ほど高い100グラム1380円前後となっている。
一方、市内でおせちを作る業者は、値上がりを想定しイクラの仕入れ価格を設定。食材の組み合わせなどを工夫し、おせちの価格自体は昨年並みを維持する。イクラが予想以上に値を上げる中、「今年は仕方ない。来年どうするか、価格や量の変更も含めて考えるしかない」と話す。
イクラの価格高騰で、市内のすし店では値上げを検討する声も。寿司正の正木利男代表は「水産物はどれも同じ状態。高くてなかなか入ってこない」とし、江戸前すし友の藤平考征店長も「値段設定した当時とは全然違う。仕入れられる量も価格も、どうなるか分からない状態」と苦境を話している。(片山新平)