「断水乗り切れ」 支援広がる
【清水・新得】台風10号の影響で大規模な断水が続く清水町と新得町。町内に給水所はあるが、独り暮らしの高齢者や小さな子どもがいる母親らが頻繁に足を運ぶのは難しい。そんな中、清水では町社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを4日午後に初めて立ち上げ、清水中学校の全校生徒や帯広の団体も5日から支援活動を開始した。新得では農産物と交換で、給水用ポリタンクを集める慈善活動が進む。ボランティアによる生活支援の輪が広がっている。(松村智裕、池谷智仁)
むすびば十勝が 洗濯代行を受付 新得、清水
被災者支援ネットワーク・むすびば十勝(高橋哲二代表)は5日、新得、清水両町内の家庭を対象に洗濯代行のボランティアを始めた。9日まで。
同ネットワークは東日本大震災で被災した親子らの保養を受け入れている。
今回の活動は事務局員・柴田芳美さんの「断水で困る洗濯を支援したい」との女性らしい発想が基になった。
初日からビニール袋などに詰め込まれた洗濯物が大量に集まり、同ネットワークのメンバーが車で帯広に持ち帰った。
高橋代表は「今週、子どもが生まれる予定のお母さんが『洗濯をお願いしたい』と利用してくれた。役に立ててうれしい」と話す。
洗濯は無料。袋は口を縛り、名前、連絡先を明記する。新得町公民館(4条南4)で午前10時半~同11時、清水町老人福祉センター(南2条7)は午前11時半~正午に洗濯物を集荷する。翌々日の同時刻に畳んで返却する。
地下水を無料提供 事業所でも相次ぐ 清水
清水町内では、地下水を無料提供する事業所や個人住宅が相次いでいる。
このうち辻屋精肉店(本通3、辻屋良美代表)には多い日で約50人が訪れる。町内に6カ所ある給水場よりも、一度に出る水の量が多い。
洗濯やトイレ用水などに使っている理美容室経営の佐藤英人さん(53)は「お客さんは少ないが店を休むわけにはいかず、早期の水道復旧を願うしかない」と話す。
同精肉店は客の要望を受け、家庭で食器を洗わずに済むよう店頭での焼き鳥販売も始めた。初日の3日は1000本以上が売れ、今後も週末を中心に続ける考え。辻屋代表(66)は「できることは何でもやりたい」と強調した。
片付けや水配り 清水中生が汗 休校明け初日に
清水中(宝輪博継校長)の全校生徒171人は5日、ボランティア活動に汗を流した。
8月31日からの臨時休校が明けたばかりだったが、生徒からの要望を受け、最初の授業が奉仕活動となった。
生徒たちは「断水が続いていますが支えあって頑張っていきましょう!!」「みなさんは一人ではありません」などと書いたメッセージカードを作成。町社協のサポートを受け、男子を中心に町内2カ所で泥の排出作業を行った他、高齢者が多い団地ではペットボトルに入った水を配布した。
女子生徒は各戸を回り、町災害ボランティアセンターに関するチラシやメッセージカードを配布。「困っていることはありませんか」とニーズ調査にも取り組んだ。54歳の主婦は「水が出ないので洗濯が大変」とこぼした。10月から生徒会長を務める岡谷内莉子さん(2年)は「家を流された生徒もいる。私たちができることを少しでもやりたい」と話していた。
ボランティア募集
町老人福祉センター(南2ノ7)が拠点の清水町災害ボランティアセンターで募集している。受け付けは午前9時~午後4時。問い合わせは0156・62・2582へ。
ポリタンクとニンジン交換 新得土田農産
新得では、町屈足西1線6で「げんちゃんにんじん」を生産する農業生産法人土田農産(土田元市会長)がポリタンクを募り、お礼にニンジンを渡す物々交換に取り組んでいる。
ポリタンクは町民への配布用として町に寄贈している。
土田一人専務が「ポリタンクは入手困難。給水場では衣装ケースを持ち込んで水をもらう人までいる。何とかしたい」と発案。同社のフェイスブックで3日に呼び掛けた。
ニンジンは8~11月に出荷ごとに収穫。そのため畑で水に漬かっているものもある。「2割程度の減収で済めばいいが」と被害は心配だが、「困っている人の励みになれば」とニンジンの提供はいとわない。
5日までに大小約40個のポリタンクが集まり、「大変ありがたい。実際にはニンジンを受け取ってくれない人がほとんど」(土田専務)と善意が広がっている。問い合わせは同社(0156・65・2605)へ。