紅葉時期、登山口入れず 日高山脈大雪山系
林道9割ズタズタ
復旧に時間…愛好者困惑
8月に十勝を襲った台風10号などの大雨の影響で、十勝管内の登山道に通じる林道のほとんどが通行止めになっている。秋が深まり山中では紅葉が進み、本来は登山シーズン真っ盛りだが、管内では紅葉の名所にも登山者の姿がない異例の状況になっている。
通行止めは管内の日高山脈と東大雪山系各所に及んでいる。日高山脈(清水町以南)の林道を管理する林野庁北海道森林管理局十勝西部森林管理署(帯広)は、「登山道に通じる林道のほとんどが通行止めになっている。林道全体でも9割が通れない状態」と被害の大きさを説明する。
9月下旬に紅葉のピークを迎えるトムラウシ山やニペソツ山など東大雪山系を管理する同管理署東大雪支署(上士幌)でも「8割の林道で通行止め。これだけまとめて通れないのは近年にない」と語る。
通行止めの原因は、雨水が林道をえぐる路面洗掘や路肩崩落が起きているほか、土砂が林道を覆っているケースもある。同管理署は「被害の大小はあるが、一般の自動車では30センチの段差があると通行できない場合がある」とし、安全を確保するため通行止めにしている箇所もある。
通行止めは基本的に徒歩でも立ち入り禁止で、林道で10キロほどかかる場所も多いため、日高や大雪山系の多くの登山口はアクセスできない状況に。登山が楽しめる山は管内では雌阿寒岳など限られ、上川管内の十勝岳などに登山者が集中する現象も起きている。
林道の崩壊に加え、国道273号の三国峠が通行止めとなっていることも、登山ができない状況に拍車を掛けている。
「三国峠が通行止めで大雪山系の中心部へ行くには大きく迂回(うかい)をしなければならない」。帯広市在住の登山愛好家で、雑誌への寄稿も行っている谷水亨さん(55)は語る。十勝での登山が厳しい状況になり、「日高山脈の登山も楽しみにしていたが、計画の全てを変更せざるを得なくなり残念」と肩を落とす。
同管理署では現在、崩落箇所などを徒歩により調査しているが、距離が長い林道もあり全てを把握できていない。造林作業など本来業務に使用する林道を中心に順次修復する予定だが、復旧の見込みは立っていないという。(塩原真)