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加工適性に優れた長球たまねぎ「北見交65号」

北見農試 研究部 地域技術グループ
株式会社 日本農林社

1.背  景
 近年の生活スタイルの変化に伴い、たまねぎ消費量の約6割を加工・業務用が占めるようになった。こうした需要における輸入割合は約4割にもなり、実需者の需要に対応した供給体制の構築・強化が喫緊の課題となっていた。こうした背景をうけ、農林水産省は、輸入野菜からのシェア奪還に向け、加工・業務用野菜への転換を推進するため、平成25年より加工・業務用野菜生産基盤強化事業を創設した。北海道でも、各産地において本事業を活用した取り組みが進められている。加工・業務用としてたまねぎに求められる特性は、用途により多様であるが、これらに着目した品種育成は遅れていた。そこで、①剥皮加工時の歩留まりの向上につながる長球形質であること、②ソテー等の加熱加工において加熱時間の短縮につながる高い乾物率とBrix であることを主な目標とし、㈱日本農林社と共同でF1品種の育成に取り組んだ。

2.育成経過
 「北見交65号」は、北見農試が育成した長球形質を有する細胞質雄性不稔系統「KTM9843-02-01A」と㈱日本農林社が育成した大球で長球形質を有する花粉親系統「NO NC・S・C」との交配により得られた単交配一代雑種である。平成22年に最初の交配を行い、平成24年より北見農試において生産力検定試験を、平成25年より地域適応性検定試験を実施してきた。平成28年に北海道優良品種に認定された。

3.特性の概要(「スーパー北もみじ」との比較)
1)草勢は同程度からやや優り、葉先枯れはやや少ない。また、生育盛期における草丈は同程度からやや優り、生葉数および葉鞘径は同程度である(データ略)。
2)肥大期は同程度であるが、倒伏期は7~9日遅く(表1)、早晩性は「晩の晩」に相当する。
3)年次や地域により抽台株の発生が認められ(表1)、耐抽台性はやや劣る。
4)乾腐病抵抗性は同程度であり(表1)、その他病害の発生程度も概ね同程度である(データ略)。
5)総収量、平均一球重および加工用収量はやや優るから優る(表1)。「カロエワン」と比べ、平均一球重は同程度であり、総収量および加工用収量は同程度からやや優る。
6)球品質は、硬さ、皮色および皮ムケは同程度であり、揃いはやや劣る(データ略)。球形状は地球型以上に縦長な長球である(図1)。乾物率およびBrix は高い(表1)。「カロエワン」と比べ、球形指数はやや高く、長球球数率は高い。
7)貯蔵性は同程度であり(表1)、「カロエワン」より高い。
8)「北もみじ2000」と比べ、加工ラインによる剥皮加工歩留まりと加熱加工歩留まりは約3ポイント向上し、加熱加工時間は約11%短縮する(表2)。
9)倒伏揃期から約2週間で根切りしても、収量性を大きく損なうことはなく、乾物率等に大きな影響を与えず、枯葉期の前進化に有効である(表3)。

4.普及態度
 晩生系統であるが、加工・業務実需者の需要に応える特性を多く併せ持っている。加工・業務向けの生産・供給体制の構築に寄与することをとおして、輸入たまねぎからのシェア奪還につながり、道産たまねぎの消費拡大に貢献することが期待される。
1)普及対象地域と見込面積:北海道のたまねぎ栽培地帯 約70ha
2)栽培上の注意事項:
 (1)耐抽台性はやや劣るため、抽台の発生が懸念される地域での栽培や早期定植は避ける。
 (2)収穫期の遅れが懸念される場合には、倒伏揃期から約2週間で根切りを行う。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro. or. jp

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