抵抗性ネギアザミウマのあたらしい防ぎ方
中央農試 病虫部 予察診断グループ
1.背景と目的
従来、ネギアザミウマに対してピレスロイド剤の効果は高く、ながねぎやたまねぎでは多用されてきた。しかし、近年道内でピレスロイド剤抵抗性ネギアザミウマが確認され、ながねぎ、たまねぎの薬剤防除が困難になっている。また、今まで問題となることがなかったキャベツでも、結球部へのネギアザミウマ被害が問題となっている。そこで、本課題では、ながねぎ、たまねぎ、キャベツ栽培においてピレスロイド剤に依存しない薬剤防除対策を確立することを目的とした。
2.試験方法
1)発生実態調査
道内182圃場から2,559頭のネギアザミウマを採集し、薬剤抵抗性遺伝子診断を行った。
2)有効薬剤の検索
抵抗性ネギアザミウマが発生している、ながねぎ、たまねぎ、キャベツ圃場で各種薬剤について防除効果を比較した。
3)新しい防除方法の確立
有効薬剤を使って、ながねぎ、たまねぎ、キャベツの被害を防ぐことのできるローテーション防除方法を検討した。
3.成果の概要
1)従来の方法に比べて、低コストで効率的な新しい遺伝子診断法を開発した。
2 )遺伝子診断により、67圃場(37%)から426頭(17%)の抵抗性ネギアザミウマを確認した。抵抗性の発生確認地域は空知、石狩、胆振、日高、渡島、檜山、上川、オホーツク、十勝地方と、全道にわたることが明らかになった(表1)。
3 )ながねぎ、たまねぎ、キャベツでの抵抗性ネギアザミウマに対してピレスロイド剤に置き換えられる有効薬剤を明らかにした。ながねぎとたまねぎでは、状況に応じて、「効果の高い薬剤」と「被害抑制薬剤」とを使い分けることができる(表2)。
4 )ながねぎの品質低下を防ぐためには収穫前30日間は、「効果の高い薬剤」による7日間隔のローテーション防除を行う。ただし、降雨等の影響により散布間隔が10日程度に開きそうな場合は、前回散布5日後に「被害抑制薬剤」を使用し、その5日後に「効果の高い薬剤」を散布する(図1)。
5 )たまねぎの減収を防ぐためには圃場観察による防除開始時期から「効果の高い薬剤」による10日間隔のローテーション防除を行う。ネギアザミウマの発生が少ない場合は2回目以降の散布に「被害抑制薬剤」を使用することが可能だが「被害抑制薬剤」は連続使用しない(図1)。
6 )キャベツの結球部被害を防ぐためには、定植前の苗に「効果の高い薬剤」による灌注処理を行う。灌注処理の防除効果が低下する前に、定植21日後頃から「効果の高い薬剤」による7日間隔のローテーション防除を行う(図1)。
4.成果の活用面と留意点
1)本成績は全道のネギアザミウマ発生地域における防除対策に活用する。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp