「スズマル」が線虫に強くなって新登場! 納豆用大豆「中育69号」
中央農試 作物開発部 作物グループ
中央農試 作物開発部 生物工学グループ
1.背 景
道産納豆用大豆「スズマル」は、納豆加工適性に優れ、実需者から高く評価されていることから、全道で2,000~3,000ha が安定的に栽培されている。しかし、「スズマル」は近年被害が拡大しているダイズシストセンチュウ1)(以下SCN)に感受性であり、被害が発生した場合は著しく減収するため、生産上の深刻な問題となっている。このため、「スズマル」と同等の納豆加工適性を持ち、かつダイズシストセンチュウ抵抗性を有する新品種の育成が強く要望されていた。
2.育成経過
「中育69号」は、「スズマル」に代わるSCN抵抗性品種の育成を目標に、中交1900F1を母、「スズマル」を父として人工交配を行い、その後DNAマーカーでSCN抵抗性の遺伝子型を選抜しながら「スズマル」を計6回連続戻し交配2)した後代から選抜、育成したものである。
3.特性の概要
1 )SCNに対して、「スズマル」は抵抗性を持たないが、「中育69号」はレース1および3に“極強”抵抗性であり、SCN発生圃場での被害はほとんど見られない(表1、図1)。
2 )成熟期は「スズマル」並の中生種である。子実重は「スズマル」並である。百粒重はやや軽いが、その他の農業特性は「スズマル」並である(表2)。
3 )ダイズわい化病抵抗性は「スズマル」よりやや弱いが、その他の障害抵抗性やコンバイン収穫特性は「スズマル」と同じである(表1)。
4)納豆の加工適性は評価の高い「スズマル」とほぼ同じである(表3)。
4.普及態度
「中育69号」を「スズマル」の全てに置き換えて普及し、「スズマル」の強い販売力を継承しつつ安定生産性と供給力の向上を図ることで、道産大豆の生産振興に貢献する。
1 )普及対象地域:北海道の大豆栽培地帯区分Ⅲ(十勝中央部・上川中南部、日高、後志(羊蹄山麓を除く))、地帯区分Ⅳ(空知・石狩・胆振東部と西部・渡島北部)、およびこれに準ずる地帯(図2)。
2 )普及見込面積:2,500ha
3 )栽培上の注意:SCNレース1、3に抵抗性を有するが、本品種に寄生するレースの出現リスクを回避するため、連作および短期輪作は避ける。SCN発生地域への導入に際しては、優占レースを確認し、「スズヒメ」にシストが着生する圃場への作付けは避ける。
【用語の解説】
1 )ダイズシストセンチュウ(SCN):豆類の根に寄生する害虫で、減収や小粒化による品質低下をもたらす。
道内には複数のレースが存在する。薬剤による防除は困難であり、抵抗性品種の利用が防除に有効である。
2 )連続戻し交配:交配で作った子に対して、片親(A)を連続で再び交配することを指す。大部分の形質は親(A)と遺伝的に似ているが、特定の形質のみはもう一方の親(B)から取り込んだ子を作るために行われる交配。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 豆類グループ
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