エチレンガスを用いた生食用ばれいしょの長期貯蔵技術
十勝農試 研究部 地域技術グループ
中央農試 作物開発部 農産品質グループ
1.背景と目的
北海道産生食用ばれいしょの安定供給と需要拡大のため、エチレン処理条件下の貯蔵により萌芽を抑制し、高品質な生食用ばれいしょの出荷期間を延長するための技術を開発する。
2.試験方法
1)エチレン処理による萌芽抑制効果
生食用ばれいしょの萌芽抑制に対するエチレン処理の効果を検討する。
供試試料:「男爵薯」「メークイン」「スノーマーチ」「キタアカリ」「とうや」「トヨシロ」「ホッカイコガネ」。いずれも枯凋後に収穫。
処理条件:無処理および4ppmエチレン処理、貯蔵温度3℃、5℃(十勝農試貯蔵庫)、処理期間12月~翌年8月
調査項目等:萌芽率(1mm以上の塊茎の割合)、減耗率、エチレン処理終了後の萌芽抑制効果の持続性(常温15℃保管後の調査)
2)エチレン処理が品質に及ぼす影響
エチレン処理が貯蔵中のばれいしょの品質に及ぼす影響を検討する。
試験項目等:デンプン価、塊茎硬度(荷重時変形率)、糖含量、食味官能検査など
3.成果の概要
1)無処理に比べて、3℃でのエチレン処理により塊茎の萌芽が明らかに抑制された(図1)。その期間は最も効果が短かった年でも「スノーマーチ」、「とうや」で1か月以上、「男爵薯」、「メークイン」、「トヨシロ」で2か月以上、「キタアカリ」、「ホッカイコガネ」で3か月以上であった。なお、5℃ではエチレン処理による萌芽抑制効果が認められなかった。
2)「男爵薯」、「スノーマーチ」、「キタアカリ」、「とうや」、「ホッカイコガネ」では、8月下旬においても未萌芽の事例があったことから、周年供給の可能性も示された。
3)貯蔵庫出庫後の常温保管による萌芽開始は、無処理に比べ、いずれの品種でもエチレン処理により遅延した。
4)塊茎の減耗について、処理間での差異は認められなかった。
5)塊茎のデンプン価は、エチレン処理によりわずかに低下する傾向が認められた。
6)塊茎硬度については、エチレン処理により貯蔵に伴う塊茎軟化がやや抑制された。
7)糖含量は、エチレン処理によって高まる傾向が認められた(図2)。また、出庫後の常温保管中に処理間の糖含量の差は小さくなる傾向があった。
8)食味官能検査の結果、エチレン処理によって、「男爵薯」ではホクホク感が低くなる傾向にあったが、いずれの品種でも「甘味」評価が高く、「食味総合評価」も高くなる傾向が認められた(表1)。
9)以上より、エチレン処理による萌芽抑制効果と品質に及ぼす影響として総括し(表2)、エチレン処理が生食用ばれいしょの萌芽抑制による貯蔵期間延長に有効であることを示した。
4.成果の活用面と留意点
1)生食用ばれいしょの萌芽抑制による貯蔵期間延長に活用できる。
2)本試験は十勝農試の小規模貯蔵庫における成果である。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研十勝農業試験場 地域技術グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp
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