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宇宙基地 大樹の構想新局面に JAXA観測所移転

【大樹】大樹町の航空宇宙基地構想が今年、新局面を迎えそうだ。独立行政法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA、本部東京)が大気球観測所の大樹町移転を計画、ハイブリッドロケットや道産小型衛星の開発研究も活発化する。構想が1985年にスタートして20年以上が経過、「宇宙のまち」・大樹は国内の研究者たちの注目を集めている。(北雅貴)

大樹町では障害物のない広大な敷地と良好な気象状況をバックに、航空宇宙産業の誘致を目指して95年、多目的航空公園を開設。97年に航空宇宙技術研究所(JAXAの前身)と協定を締結、本格的に航空宇宙関連実験が行われるようになった。98年には延長1キロの滑走路を舗装化、大学、企業などの実験にも使われている。
自助努力で整備成功につながる2001年度から04年度までは、全長68メートルの無人飛行船を高度4キロ地点で飛行させる「成層圏プラットフォーム研究」(定点滞空飛行試験)が成功。道産小型人工衛星の打ち上げを目指し、「北海道衛星株式会社」(社長・佐鳥新北海道工業大学助教授)が町内に本社を構えた。
昨年は、米ベンチャー企業「ロケットプレーン社」(オクラホマ州)が大樹と帯広を視察。同社は一般人を対象に、高度100キロ付近での無重力体験飛行の事業化を目指しており、離発着可能な有力候補地として大樹に着目した。
NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)の伊藤献一副理事長は、「大樹町は自助努力で航空公園を整備するなど、自らの考えで取り組んできたことに意味がある。(この姿勢が)成功につながった」と評価する。
最先端の技術開発のメッカに同公園では昨年10、11月、ヘリコプターの騒音軽減関連など6種類の実験が行われた。12月23日には、道産の実用気象観測用小型ロケット「CAMUI(カムイ)ハイブリッドロケット」が打ち上げられている。伏見悦夫町長は「最先端の技術開発のメッカになりつつある」と強調する。
同町の構想に弾みをつけそうなのが、JAXAが運営する大気球観測所の移転。現在は岩手県大船渡市にあるが、大気球を人工衛星やロケットと並ぶ宇宙観測用飛翔体に位置付けるJAXAは、大型格納庫のある大樹町に新たな研究フィールドを求めた。
町は気球観測所の誘致に関し、「大樹が航空宇宙産業に熱心だとPRできる。単発の実験が多かったこれまでと違い、多くの人が移住し、町の活性化にもつながる」と期待する。
地元の子供から飛行士や学者を航空宇宙基地をめぐる豊富な話題を受けて、子供たちの夢も膨らんでいる。日本宇宙少年団大樹分団(勝海敏正分団長、団員39人)は、ロケットの打ち上げ見学会を開くなど、子供たちの意識啓発に努めてきた。毎年、開催している小・中・高校生対象の「スペースイラストコンテスト」には、「宇宙空間での牛の乳搾り」など夢あふれる作品が寄せられている。
「子供たちの中から宇宙飛行士や科学者を育てたい」−。大樹町の構想は着実に、次代へと受け継がれている。

/取り組み20年着実に/伏見町長「大樹」の名前広がる/
大樹町が航空宇宙基地構想に取り組み始めた1985年、中心的な役割だったのが当時、町の開発振興課長だった伏見悦夫町長。「宇宙」を通じたまちづくりや将来の夢を聞いた。(北雅貴)
−取り組みから20年以上が経過しました。
JAXAなどによる世界初の飛行試験「成層圏プラットフォーム」の実施や、道産小型ロケット「CAMUI(カムイ)ハイブリッドロケット」の打ち上げ、気球でヘリの騒音を計測するなど、さまざまな実験が行われた。多目的航空公園は広大な面積、気象条件が実験に適している。道内の研究者が打ち上げを目指している超小型衛星の名前が「大樹」と名付けられた。「宇宙のまち大樹」の名前が浸透していると実感している。
−波及効果は。
定点滞空飛行試験が行われた2004年度は、宿泊や食事、航空公園使用料などで5億2000万円の経済効果。当時、宿泊施設が不足し、約半数が広尾町に宿泊するなど、ホテル建設が切望された。昨年11月には地元にホテルがオープンし、町の活性化につながった。今後の展開次第では雇用の創出も期待できる。町民も非常に協力的。実験モジュールを海上に落下させた時は、漁船を出し、回収作業を担当してもらった。農家も牛乳を差し入れするなど温かく迎え入れ、研究者の中に移住を希望している人がいるほどだ。
−航空公園の将来展望を。
宇宙基地の拠点として、また、飛行機のように空気吸い込みエンジンを使用し水平に離着陸するタイプのスペースプレーンが飛ぶような施設になってほしい。そのためには町として協力を惜しまない。今年も多くの実験が予定されており、夢が少しずつ、着実に進んでいるような気がする。わくわくしている。

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