ハイブリッドロケット実験 大樹実施見直しも 道宇宙科学創成センター 高層用打ち上げ困難
【札幌】大樹町で打ち上げ実験が行われてきたハイブリッドロケットの開発を支援しているNPO法人、北海道宇宙科学技術創成センター(札幌、HASTIC)は、次の実験段階となる高層用ロケットの射場から、同町を外すことも含め検討している。十分な保安距離を確保できないため。これまで行ってきた到着高度1キロまでの打ち上げは継続する意向だが、本格的な実験には同町が利用されない可能性が出ている。(平野明)
ハイブリッドロケットは、町の多目的航空公園で2002年3月からこれまでに4回打ち上げられた。ロケットの到達高度1キロで射点から半径1キロを保安距離としてきたが、来年3月に打ち上げるロケットの到達高度は3−5キロを目標とし、保安距離も3−5キロ程度まで広げなければならない。
ところが、今の射点では、国道の関係から保安距離をこれ以上広げるのは難しく、仮に保安距離を5キロまで広げると民家や晩成温泉なども圏内に含まれ、打ち上げは無理となる。
HASTICでは、来年3月に続いて06年度か07年度には、到達高度65キロの高層気象観測用ロケットの打ち上げ実験を予定。その際には10キロの保安距離を必要とする。このため来年3月の打ち上げだけでなく、将来も見越して打ち上げ場所を選考する方針。
新たな射場として網走管内滝上町、紋別市、宇宙航空研究開発機構の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)、能代多目的実験場(秋田県)が浮上している。HASTICは既に宇宙航空研究開発機構へ口頭で意向を伝え、滝上町では協力姿勢を見せている。
伊藤献一専務(北大名誉教授)は「射場の選考には、地元との関係や漁業補償などの問題があり、検討はこれからで、正式には何も決めていない。仮に射場を移すことになっても大樹町には、お世話になってきた関係があり、到達高度1キロまでの打ち上げを継続したい。宇宙に関したイベントや教育活動などが期待できる」と話している。
大樹町の宇宙への取り組みは、1988年に策定された道の戦略プロジェクトに航空宇宙産業基地構想が盛り込まれ、宇宙輸送機の離発着場が大樹町に計画されたのが発端。
最近は、積極的に実験を受け入れてきたが、宇宙航空研究開発機構と情報通信研究機構による無人飛行船による「成層圏プラットフォーム」の飛行試験が事務評価や予算の関係で今年度は中止されている。
町は「射点を変更し海上でロケットを回収する選択肢もあるはず」としている。
推進剤に固体燃料と液体酸素を使い、燃料性能の高い液体ロケットと、構造が簡単で燃料保存も容易な固体ロケットの利点を併せ持つ。従来より低コスト、低公害で、安全性が高いとされ、道の宇宙産業参入の切り札として実用化が模索されている。