つながることができる場所~人の気配
数年前の大河ドラマ「西郷どん」にハマることも必然だったと思えるほど、僕は鹿児島が好きだ。今回は、先月もライブをするために訪れた鹿児島で、僕がキーマンだと思っている人物を紹介する。
鹿児島駅から徒歩3分の所に「WALK INN STUDIO!」という音楽スタジオがある。オーナーである野間太一さんとは、彼が東京に住んでいる時からの仲間である。先輩である太一さんをあえて仲間と呼びたいほどに、僕は彼を信頼している。
ライブの音響の仕事をしながら、地元鹿児島で音楽スタジオを経営する。同じ音楽の仕事ではあるが、誰にでもできることではない。ロビーにはいつも人がいる。スタッフとバンドマンが同じソファに座り、くだらない会話を繰り返しながら時には夢までも語り合っているのだろう。僕にとっては帯広のライブハウス「REST」がそうだったように、そういう場所が街には必要だ。当たり前の中にいると気が付きにくいが、地元の若者にとって「つながることができる場所」こそが『Hope』につながるのだ。
東京での経験を持って地元に戻り、今も全国を飛び回りながら街と人、そして大人と若者をつなぐ。言葉で言うと簡単だが、次々現れる登場人物とのバランスを取るだけでも簡単ではないと想像する。新しいことを取り入れながら、そこに永く住む人の気持ちや生活もくみ取らなければならない。それを考えているうちに、本来の目的から外れていくようなことも少なくないはずだ。
ここまで書いて、「そんなに難しく考えてないよ」と笑う太一さんの顔が浮かんだ。要は自分がワクワクできるかどうか。今回の打ち上げでも、結局はそこに落ち着いたように記憶している。難しいことを言う大人に、若者は興味を示さない。その共通の意識もまた、僕が彼を好きな理由である。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続け、V6への楽曲提供も話題となる。ニューアルバム『Like A Diary』のリリースツアー北海道編は、6月7日札幌、8日東川、アコースティックで開催。