バックカントリーに気を付けて!遭難増で注意喚起 過去には十勝でも遭難事故が発生
冬の山岳遭難でバックカントリーによる発生が増加している。道内の過去5年間(2018年~22年)の冬山(11月~3月)遭難の発生状況をみると、計234件の発生件数のうち176件(75%)を占めた。十勝管内でも今年3月に死傷者が出る遭難が発生。スキーや冬山登山の本格的なシーズンを前に、関係者は注意喚起している。(藤家秀一)
スキー場ではない自然の場所を滑るバックカントリーについては、愛好者が増える一方、外国人を含めたスキー客やスノーボード客による遭難も相次いでいる。今年に入って十勝管内でも遭難事故が発生。3月に清水町のペケレベツ岳(1532メートル)で60代男性が雪崩に巻き込まれて死亡、新得町内の佐幌岳(1060メートル)では別の60代男性が滑走中に木にぶつかって足を骨折し、道の防災ヘリで救助された。
地元山岳連盟の斉藤邦明会長も、バックカントリーでの遭難増加を心配する。「スキーやスノーボードは速いので周りの景色を確認する暇がないので迷いやすい。装備がよくなった分、急斜面に行って雪崩に遭う危険性も増していると思う」と話す。
バックカントリーを引率する業者も、プロならではの視点から安全対策には細心の注意を払っている。20年近くのガイド歴がある「とかちアドベンチャークラブ」(新得町)の野村竜介代表は、「滑走途中にけがをしたら自力で脱出できるのかなど、現場に潜む危険性をあらかじめ想像しておくことが大事」と指摘。雪崩などの可能性についても「シーズン中に必ず数度は、雪の状態が大きく変化する天候の日がある。ガイドとして、雪質を大きく変化させるような天候の日はガイドは特に注意している」と話している。
「分岐に目印を」専門家が講習会
山岳遭難防止に向けた「安全登山講習会」が1日、帯広市の十勝総合振興局で開かれた。山の天気や非常時の対応について専門家が講義した。
最初に十勝山岳連盟の斉藤会長が、道内の山岳遭難の発生状況について説明。10月末までに136件に達し、すでに昨年1年間の115件を上回っているとして注意を呼び掛けた。
続いて帯広測候所の鎌田匡俊予報官が「山の気象と安全登山」と題して講演。過去に道内で起きた山岳遭難時の天気図を解説するなどして、変化が激しく荒れがちな山の天候の特徴を紹介した。また登山者へのアドバイスとして、高層天気図の活用や測候所ホームページ内の「登山者のための気象・火山情報」の利用を求めた。
また十勝山岳連盟の宇野吉彦さんは、「登山における非常時の対応について」説明した。宇野さんは登山時の道迷いについて、「下山時に迷うことが多いので、こまめに現在地をチェックしたり、尾根の分岐点に目印を付けたりすることが大事」と指摘。さらに「頂上に着いた時には気を抜かず、下りる方向を確認してから休憩してほしい」と話した。