面積2倍 国内最大規模に 「年内指定は困難」 地権者との調整に時間 日高山脈国立公園化
環境省は9日、日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に際し、面積を現在の2倍に拡張し、国内最大規模の国立公園となる見通しを明らかにした。国立公園の資質に値する豊かな自然環境が国定公園の外側にも確認されたため。一方、最速で年内としていた国立公園指定については、一部民有地の地権者との調整に時間を要しており「年内は厳しい状況」とした。
環境省、自治体首長に説明
同日、帯広市役所で開かれた同省中央環境審議会委員と関係自治体首長との意見交換会(非公開)の冒頭、奥田直久環境省自然環境局長が「わが国最大規模の国立公園が誕生する見込み」と述べた。
日高山脈襟裳国定公園の面積は10万3447ヘクタール。拡張により、国内最大の国立公園の大雪山国立公園(22万6764ヘクタール)を上回る可能性もあるという。環境省によると、拡張部分は十勝、日高の両側で、国有林の森林生態系保護地域を中心に道有林も含む。
一方、年内を目指していた指定は、民有地の一部で国立公園化に伴う規制をめぐって調整が続いていることから厳しい見通し。同省によると、最近になって一部の自治体から区域拡張の要望もあった。「調整は丁寧にやりながらも、早期実現に向けて取り組んでいきたい」(櫻井洋一環境省北海道地方環境事務所長)とする。調整が難航している自治体について同省は明らかにしていないが、関係者によると、アポイ岳のある日高管内様似町の私有地とみられる。
日高山脈は、環境省が2010年度に発表した国立・国定公園総点検事業で、国立公園の新規指定の方向性が示された。19年度に指定基本方針を策定し、21年度末での指定を目指して作業を進めていたが、関係機関との調整に時間を要し、昨年11月に指定は最速で22年12月としていた。(澤村真理子)
資質を高く評価 連携強化求める 中央環境審視察
日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に向け、環境省の中央環境審議会委員が9日、十勝入りした。2泊3日で十勝、日高の両管内を視察している。
メンバーは中央環境審議会自然環境部会の大学教授ら13人と専門委員1人。初日は関係自治体の首長らとの意見交換会(非公開)が行われ、十勝、日高の13市町村長が国立公園化への期待を語った。
環境省によると、委員からは動植物や地質など国立公園としての資質を高く評価する意見があったほか、出席者から自治体間の連携強化を求める声もあった。
意見交換を終え、十勝・日高山脈観光連携協議会会長の手島旭芽室町長は「審議会の方々の考えも聞け、いい機会となった。地元の意見、要望も伝えさせていただいた。早期指定の実現を望みたい」、日高町村会の大西正紀会長(えりも町長)は「丁寧に説明して全体が理解してもらった上で進め、一日も早い昇格を望みたい。十勝を含めて良い形で進み、両地域や北海道が元気になるきっかけになればいい」と話した。
10日は日高管内様似町のアポイ岳など、11日は襟裳岬や中札内村の札内川園地を視察する。(澤村真理子、安田義教)